第二章 大魔王ペソ

第六話 ニュースバラエティは悪いニュースばかり

  「あーあ、暇だなぁ......」


 アマツは目を半開きにして、溜め息をつきながら言った。


 「入隊して一週間......一度も指令が来ないなぁ」


 彼は新人なのか、アマツがすんでいるT市にエネミーが現れてないからか、ディフェンサーズに入隊してからまだエネミー退治をしていない。

 そして、彼はその暇をもて余して、テレビを見ながらポテトチップスを食べていた。


 「......こんなことばっかしてたら、ニートと変わらないな。でもどうしよう」


 彼は少し考え込んで、こう言った。


 「そうだ、十郎のうちに行こう」



 彼はパジャマを着替えると、特に何も持たず家を出ていった。


 外に出ると、このT市はあまり雨が降らないこともあって、快晴だった。

 そして、季節は春なので、日差しが暖かくて、心地よい。

 町は二週間前のエネミーの攻撃で多少の瓦礫があるものの、それ以外はいつも通りの風景である。


「うーん、十郎って、俺が生きてること知っているのかな?」


 彼らはあの日から二週間ほど会っていない。

 連絡も取っていない。

 それが故に、アマツは自分が生きていることが果たして十郎に認知されているのかが心配だった。


 そうやって不安に思っているうちに、十郎の家に着いた。

 十郎は五階立てマンションに住んでいて、アマツよりも少し豊かな生活を送っている。


 アマツはマンションに入ると、階段を登って十郎の部屋に向かった。

 コンクリートの階段を登る音が暫く響く。


 五階に登り終わると、「502」とかかれたドアを見つけた。

 そこが十郎の住んでいる部屋だ。


 アマツはインターホンを押した。

 少し立つと、そのインターホンから声が聞こえた。

 十郎の声だ。


 「はーい、誰ですか?」

 「俺だ、アマツだ」

 「え!? まじで? 今いく」 


 十郎は驚いたような声で言った。

 彼はどうやら生きていると知らなかったようだった。


 そのすぐあと、ドタドタと走る音がした後、鍵が開く音がした。


 「おお!! 本当にアマツだ!」

 「だから俺っていってるじゃん」

 「良かったよ。死んだのかと思ったよ!」


 十郎はアマツの肩をポンと叩いた。


 「やっぱりそう思ってたのか......」

 「いやもうエネミーに突っ込んだんだから食われてたのかと」

 「もうほんと酷いわお前」


 アマツは苦笑いした。


 「でさ、俺ディフェンサーズに入ったんだけどさ」

 「ディフェンサーズ? 何であんなに嫌がっていたのに?」

 「あのエネミーを倒したら、なんか自信が出てきちゃってさ......」


 アマツは少し照れて言った。


 「へー、凄いな、お前」

 「つってもさ、おれ全然仕事来ないんだよなぁ」

 「何で?」

 「信用されてないのかなぁ......」


 二人は廊下を歩き名がら話している。


 「まあいいじゃん。取り敢えず収入は出るんだろ?」

 「まあな。でも、せっかく入ったんだし、エネミー倒したいなぁ......」


 そういうと、二人はリビングについた。

 アマツはテレビの前においてあるソファに座った。


 「おいおい、勝手に座るなよ。俺のものなんだぜ?」

 「えー、いいじゃん、俺ら親友だろ?」


 と、アマツは十郎を半ば強引に説き伏せた。


 「さーてと、テレビでも見るか」


 アマツはソファの上に載っているテレビのリモコンを手に取って、テレビの電源を入れた。


 テレビは「カチッ」と音をたてた直後、テレビには報道バラエティの番組がやっていた。


 「最近、エネミーの発生が多くなっていますが、小宮さんはどのようにお考えですか?」

 「まあやはり放射能汚染された生物がこのころになってその影響を受け始めたのでしょうね」


 エネミーに関する話題だ。


 「またこれか......景気のいい話なんて最近ほとんどないなぁ......」

 「まあ、この原因を作ったのは俺たちのご先祖様だしな、エネミーはそれに対しての復讐なんだろうな」


 「私もそう思います」

 「お、峰さんもですか」

 「ただ、私の場合、おそらく小宮さんの考えてることとは少し違うと思います」


 峰という人物は机に肘をついて手を組んだ。


 「と、言いますと?」

 「小宮さんの場合、直接影響を受けた生物が変異してエネミーになるとお考えですよね?」

 「はい、そのように考えています」

 「ですが私はそれに加えて、放射能に汚染した生物が子孫を残し、その子孫がエネミー化するというケースもあると私は考えています。なので、このようにエネミーが増えているのだと私は思っています」

 「なるほど」


 と、その時、サイレンが外から鳴り響いてくるのが分かった。


 『エネミー発生! エネミー発生! このT市に、エニミーが現れました。レベルは、3~4です。』


 アマツは反射的にソファから立ち上がった。


 「まさか......エネミーが!」


 サイレンがなった直後に、番組にも速報が入った。


 「それでは次の......ん? あ、来た!? えーただいま速報が入りました。T市にエネミーが発生しました。その地域に住んでいる方々は急いで避難してください。 繰り返します――」


 「またエネミーか、2週間前にT市に現れたばかりなのに......」


 十郎はそういって玄関に向かった。


 (ん? まてよ? この地域に現れたということは......)


 アマツの携帯がバイブで揺れた。


 (これは、もしや......!)


 アマツは素早くその携帯を手に取った。


 「もいもし?」

 「あ、アマツ君か? 今、T市にいるなら、今すぐ現場に向かってくれ。」

 「わ、分かりました!」

 アマツが電話を切った。

 携帯を握っているてが震えた。これはバイブで震えてるのではない。


 「や......や......やったああああああああ!! ついに初仕事だあああ!!」


  アマツは飛び上がって喜んだ。十郎はそれに驚いたのか体をびくってさせた。


 「!? ア、アマツどうした?」

 「ついに初仕事が来たんだよ! どんだけこの時を待っていたか!?」

 「そ、そうか、それは良かったな。だけど、アマツ、死ぬのだけは絶対にゴメンだからな?」

 「もちろん。 俺は生きて帰ってくるさ!」


 そうすると、アマツは十郎より先に外へ飛び出した。


 ......が、アマツの最初の仕事は、いきなり苦難の相手となった。

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