7日目 夜 唐突の……

 なんとか母さんを説得できた。幸い湊都は変なことは何一つ言わなかったので思ったよりもスムーズに進んだ。


 リビングに布団一式を敷き終わると、文学談議が始まった。


「こうしてアンタと話していると時間が経っているのも忘れるわ」


「俺もだ。好きなことを話していると自分も楽しくなるからな」


「え!? もう十時!」


「そうだな、そろそろ風呂に入るか。母さんはもう入ったみたいだし」


「そうね。先に入る?」


「いや、お前が先に入れよ。俺は後でいいから」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


 湊都は似合わない?返事をして着替えが入っているであろう袋を持った。


 俺は風呂場に湊都を案内し使い方を教えた後、風呂場から出た。


 どこで待とう。俺の部屋で待つとわからないだろうからリビングで待つか。


 ピンポーン


「?」


 家のチャイムが鳴った。


 こんな時間に客? 一体誰だ?


 鍵をかけていたドアを開けた。


「悪いね。夜分遅くに」


「!?  賭針さん……!」


 何でここに!?


「僕の婚約者を知らないか?」


「ど、どうして、ですか?」


「八津芽が使用人の男に「文学仲間の家に泊りに行く」と伝えた、と聞いたからな。


今日は義父さんも義爺さんもいない。男の家に泊りに行くのは絶好のチャンスだ」


 使用人……マホルさんか。


「だから俺の家、ですか?」


「そうだ……どうやら僕のアテは当たっていたみたいだな」


 賭針さんの目線が下にいった。


 ? ……靴か!


「今すぐ八津芽を出せ」


「今は風呂に入っている」


「そうか……お邪魔させてもらうぞ」


「ちょ!」


 勝手に上がるなよ!


 賭針さんは靴を脱ぐと真っ直ぐ進んで行った。


 マズイ! そっちは風呂場だ!


 俺は止めようとしたが賭針さんはドアを開けた。

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