7日目 放課後 お泊り

「はじめまして夜想君のお母様。同級生の湊都八津芽です。夜想君にはいつもお世話になっています」


「……」


 放課後、俺が学校から帰ってしばらくするとインターホンが鳴り、母さんが玄関に来ると湊都が挨拶した。


「明日の朝までお世話になります。宜しくお願いします」


「えっと……上がって」


「おじゃまします」


 湊都は靴を脱いで端に揃えると母さんがリビングに案内して椅子に座らせた。

「何も無くてごめんなさいね」


「いえ。あ、ありがとうございます」


 湊都は母さんから出された茶に対して礼を言うと飲み始めた。


「おいしいですね。これは玄関先で育てているハーブからつくったハーブティーですか?」


「あら詳しいのね」


「私の母もハーブを育てるのが趣味なので、少しだけ」


 そうなんだ。


「湊都ちゃん、ちょっと待ってて。夜想、来て」


「ああ」


 母さんは俺をリビングから一番離れた母さんの部屋に連れて来た。


「どういう事! 泊りに来る人がいる事は聞いていたけど!」


「だったらいいじゃないか」


「私はてっきり男の子が来ると思っていたの! まさかアンタが女の子連れてくるなんて思わなかったわよ! しかも湊都家のご令嬢を!」


「ああ、女って言わなかった事は悪かった」


「まさかだと思うけど……一緒の部屋で寝るんじゃないでしょうね」


「う~ん」


 本当は一緒に寝て見守ってやりたい。しかし『一緒に寝る』なんて言ったらどんな顔をするのだろうか。とても言えない。


「さすがに一緒には寝ない。だからリビングに湊都を寝かせてくれ」


「でも……」


「ただ夜通し文学談議するだけだって。なんなら湊都に聞いてみろよ」


「わかったわ。本人に聞いてみる」


 母さんが部屋から出たので俺も一緒に出た。


 ……頼むから前みたいに「恋人」とか言うんじゃないぞ湊都。

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