3日目 放課後 政略結婚

「おい! どういう事だよ!」


 部屋から出るとすぐに俺は湊都に問い詰めた。


「ゴメン、いきなりで」


「まさか『今日来て欲しい』ってこの事か?」


「そう」


「でもどうしてあんな事言ったんだ?」


 嫌なら断ればいいだけの話じゃないか。


 湊都はしばらく黙った後、口を開き始めた。


「あの男、パパの仕事の上司の息子なの」


「ああ、国会議員の」


「それでね、パパはあの男と私を結婚させるつもりなの。理由はさっき言っていた通り、互いの先祖の遺言で」


 先祖の遺言か。俺みたいな一般家庭には縁がない話だな。さすが金持ち。


「パパはもちろん、ママもお爺ちゃんもこの結婚に賛成しているの。『湊都家より金持ちの家と結婚できるなんてこんなチャンス二度とない』って」


「そんなに金持ちの家の男と結婚できるのに何で嫌がるんだ?」


 玉の輿なんて誰もが憧れる結婚だと思うぞ。


「……」


 湊都はなぜか俯いてしまった。何か悪い事でも言ったか?


「……て」


 ん? 何か言ったか?


「夜想!」


「うわっ!」


 湊都が勢いよく俺に抱きついてきた!


 柔らかい湊都の体が俺の体を包む。

 十八年生きていて女に抱きつかれるのは初めてなので俺の体は緊張して少し硬くなった。


「お願い夜想! 私のお願いを聞いて!」


 お願い? 一体どんな……。


「このままじゃ私、殺されるかも……」

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