3日目 昼休みと放課後

「お願い古刀音。今日私のウチに来て!」


 昼休み中、本棚に囲まれた図書室の奥で湊都は俺に頭を下げて言ってきた。


「……一体何があったんだ?」


「とにかく来て! もうアンタしか頼れる人がいないの!」


 湊都は必死で俺に助けを求めている。これは聞くしかないな。


「わかった。学校が終わったら一緒にお前の家に行く」


「じゃあ放課後、よろしく」


* * * * * * * * * * * * * * * 


 湊都家に上がると前に来た時とは違った雰囲気がした。


「これからある男と一緒に会ってほしんだけど」


「いいけど」


 その為に俺を呼んだのか?


 湊都に案内され、俺は玄関近くの一室に湊都と一緒に入った。


「やあ、おかえ……なんだその男は?」


 入るとYシャツに青いネクタイ、黒いズボンの見た事がない制服姿の男がいた。


「はじめまして。古刀音夜想です」


 俺は一瞥しながら挨拶した。


「ほう、お前が……」


 なんだか俺をジッと見てきた。


「お前が八津芽の彼氏か」


「!?」


 か、か、彼氏!?


「そうよ。夜想も私と趣味が同じで文学男子なの」


「なるほど。趣味が同じで気も合うとは、両思いなるのもわからなくはないな」


 ちょっと待て! 両思い? 俺と湊都が!?


「そうよ。これからもっとラブラブになって結婚するんだから!」


「ちょ! 結婚!?」


「やだぁ、照れちゃって」


 照れてねぇよ!


「これでわかったでしょ賭針とばり。私には夜想っていう世界一の彼氏がいるの。だから……」



「アンタとの政略結婚は無しって事」


 政略結婚?


「政略、とは失礼な。湊都家と梔子くちなし家が再び寄りを戻す、というお互いのご先祖様の願いを叶える。これを君は政略結婚だと言うのか?」


「当然よ。私は先祖が交わした昔の約束なんて知ったこっちゃないし。それにアンタより夜想の方がいい男よ」


「あのさ、湊都……」


「話は終わりよ賭針。帰ってもいいわよ」


「ま、待て!」


「ちょ、湊都!?」


 湊都は賭針さんが止めるのも無視して俺の右腕を掴んで力強く引きずって部屋から出た。


 ……なんか面倒そうな事に巻き込まれた気がする。

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