1日目 暮れ 書庫内にて

「すげぇ……」


 書庫の中は昭和レトロな雰囲気が漂う小さな図書館の様だった。


 この中に古い本があるなんて……まるでタイムスリップしたみたいだ。いや、もうしてるか。『タイムリープ』だが。


「どう? 雰囲気でるでしょ」


「ああ。最高だな」


「アンタならわかってくれると思ったわ」


「他の誰かでも連れ来た事あるのか?」


「無いわ。アンタ以外のクラスの奴なんか連れてきたら『ほこりっぽーい』とか『古っ』とか非常識な事言いそうだから」


「まぁ、だろうな」


 こういう価値はクラスでは本好きの俺達にしかわからないか。


「本はどういう基準で並んでいるんだ?」


「作家の五十音順よ。さらにその作家の作品を五十音順に並べてあるわ」


「細かいな」


 作家の五十音順はわかるがさらに作品名を五十音順には並べるのは細かい。


 触らないでちょっとだけ見てみるか。


 俺は本棚に近づいた。


 これは……『或る女』か。って事はここは有島武郎の並びか。


「読める本、何冊か持ってくるわ」


「ああ、ありがとう」


 俺は再び本棚に目をやった。


 ……って何をやっているんだ俺は!


 せっかくタイムリープしたのにこれじゃあ湊都を守れて……いるのか?


 俺が傍にいれば湊都を守ってやる事ができる。だがずっとそばにいる事はできない。家も違うし。


「さ、持ってきたわよ」


 湊都が本を何冊か持ってきて部屋の真ん中にある木製の机の上に置いた。


「ああ。ありがとう」


 俺は机の椅子に座り湊都が持ってきた本を読み始めた。

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