1日目 夕方 湊都家にて
「うわぁ……」
思わず声を上げてしまった。
「どう? 村一番の屋敷は?」
「正直驚いた。こうして直接見るのは初めてだからな」
本当に大きい。和風の赤い瓦の屋根に白と茶色の外壁は斜陽館を彷彿とさせる。いや、むしろ斜陽館を元に造ったのか?
「おかえりなさいませ、お嬢様」
庭の掃除しているいかにも使用人らしい若い男が湊都に挨拶した。
「ただいま。お爺ちゃんは?」
「
なんだ、いないのか。
「じゃあ今家にいるのはアンタだけ?」
「はい。そちらの方は?」
「文学仲間、といったところかしら」
「はじめまして」
紹介されたので俺も挨拶した。
「はじめまして。僕は使用人の
「はい。おじゃまします」
物腰柔らかくてやさしそうな感じだ。
背が低く小柄でキレイな黒髪は顔のせいもあってか女に見間違えられてもおかしくない。男用の茶色い着物を着ているおかげで男だと認識できる。
「マホル。お爺ちゃんが帰ってきたらこの人が来ている事、伝えておいて」
「わかりました」
「じゃあ行きましょう」
再び湊都に案内され、俺は屋敷の中に入って行った。
「ここで靴を脱いで」
湊都に言われた通りに俺は靴を脱いで家の中に上がった。
「広いからはぐれないように付いて来て」
「ああ」
確かに広い。初めて来た人は案内する人が常にいないと本当に迷ってしまいそうなくらいだ。
玄関の近くにあった階段で俺達は二階に上がり始めた。
「二階の奥の部屋にあるんだけど、ちょっと注意して欲しい事があるの」
「何だ?」
「書庫の中には大量に本があるんだけどね」
「中には記念館に飾ってあってもおかしくないような文豪の初版の本とかあるから扱いには注意してよね」
「……なんで寄贈したりしないんだ?」
「最近見つけてパパがやろうとしたけど私とお爺ちゃんが止めたから。だって家宝になるじゃない。それにアンタもそれがどんなに価値がある物がわかるでしょ」
「まぁな」
文学好きとしてはそういう物が家にあったら嬉しくてたまらない。
話していると階段を上りきり、湊都が先に行った。
「ここよ」
湊都は大きな扉の前に立つと、ゆっくりと扉を開けた。
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