1日目 夕方 湊都との会話
「アンタ今まで読んだ純文学の作家何人いる?」
「ん~……6人かな?」
「勝った。私15人」
「そんなに読んでいるのか?」
「えぇ。なんせ小学生の頃から読んでいるもの」
放課後の図書室には俺と湊都しかいない為、人の目を気にせずに話していた。
「アンタもっと読んでいると思っていたのに」
「最近は詩集ばっかり読んでいたからな」
二年になってから。
「なるほどね。詩はたまに読むくらいだからあまり詳しくないわ」
「なら、詩人の方では俺の方が上だな」
なんせ16人だからな。
「ねぇ、この後時間ある?」
「あるけど」
「私の家に行かない? この図書室くらい本があるけど」
これは初めてだ。2年前は誘われずにいつも図書室で話しているだけだった。
「……わかった。行く」
「じゃあ今から行くわよ」
俺達は図書室を出て昇降口へ向かった。
「見たらきっと驚くわよ~」
「ま、元村長と現役国会議員を輩出している家だからな」
「よくご存知ね」
「皆知っているぞ」
こんな事を話しながら俺は湊都に付いて行った。
湊都の家はさっき話した通り、昔から政治家を輩出している一家で村一番のお金持ちだ。爺さんは二年前に定年退職したこの村の元村長で、父親は現役の国会議員だ。
俺は高校からコイツと一緒になったので最初はコイツが何者なのかわからなかった。
前に湊都と小学校の頃から知っている奴に聞いた話から話だと、そういう家に産まれた為か湊都は自分の事を「特別な存在」とか思っているらしい。
なので俺を含めた周りの人達を見下すような態度ばかり取っている。
その結果、湊都はクラスで一番嫌われていつも一人でいる。本人はこの状況を満足しているのか性格も態度も変えていない。
「どうしたの? さっきから私の事ずっと見て」
「え?」
「私にみとれているの? ま、無理もないか。私のお母さん元女優だから」
「そうなのか?」
「知らなかったの? 芸能界には疎いのね」
「あまりテレビ見ないからな」
本を読んでいる時間が圧倒的に多い。
「もうすぐ着くわよ。お父さんは東京にいるけどお爺ちゃんはいるから失礼のないようにね」
「わかったよ」
元村長に会うのか。ちょっと緊張してきたな。
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