第11話伝わりにくいこと

 愛菜の部屋は広く、ぱっと見た感じだと真城家の地下の部屋と同じか少し小さいくらいの大きさだ。そう言うとたいした広さではないと思えるが、ただの一部屋が一家族暮らせる家と同じ大きさだと考えるとかなり広い。

 その大きな部屋には大きなベッド、大きなぬいぐるみ、大きな机など全て規格外の大きさのものが置かれている。大きさに目をつぶれば女の子の部屋の印象そのもので、多くのものにピンクと白が使われ、花の香りのようないい匂いがする。とてもさっきまで汚れていただろう部屋だとは思えない。

「そこにお座りくださいまし」

 愛菜に用意してもらったクッションに座らせてもらう。愛菜はベッドに腰かけ、日花里は俺の横でふわふわと浮いている。

「さて、では作戦会議といきましょうか」

 いつの間にか俺たちと愛菜の立場が逆転していた。俺たちが璃咲利夫に復讐しようとしていたのに、愛菜が主導になってきている。それがいいことなのか悪いことなのかはわからないが、今問題は起こっていないのでよしとするか。

 そう思っていると、扉をコンコン、と叩く音がした。

「どうぞ」

「失礼します」

 愛菜の声によって入ってきたのは美紀さん。手にはトレーを持っており、その上にはクッキーや紅茶が乗せられている。

「お菓子を持ってまいりました」

「ちょうどいいですわ。あなたもここに座ってくださいまし」

「は、はぁ……」

 意図がわからないのか美紀さんは困惑気味に返事をする。俺の座っている前のテーブルにお菓子を置き、配ることもなく俺の対面に座った。愛菜の奴、何をするつもりだ?

「美紀、あなたはわたくしの味方ですわよね?」

「えぇ、もちろんです」

 俺も愛菜の意図が読めない。美紀さんもまだわかっていないのか曖昧な返事をするだけだ。だが愛菜はその返事に満足したようで、意気揚々にこう提案した。

「ですわよね。ならあなたもわたくしたちに協力してくださいまし」

「おい、まさか……!」

 この女、おそらくとんでもないことを言おうとしている。

「美紀。一緒にお父様、璃咲利夫を地獄に叩き落としてさしあげましょう」

 愛菜に主導権を握らせたこと。やっぱりそれは、間違いだったのかもしれない。

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