第9話メイドさんに挨拶
璃咲邸はまさしく豪邸、といった風貌だった。洋風の巨大な建物は悠然と建っており、周りにある他の家も普通の家に比べて豪勢だが、それすらも見下しているようだ。
「金持ちめ……」
日花里が怨めしそうな眼差しで愛菜を睨む。幽霊らしい行動といえばこんなだから困る。
「何か変な声が聞こえますわ……」
「気にしなくていい。だから早く中に入れてくれ。あんまり外で長居したくないんだ」
「わかりましたわ」
愛菜は巨大な門の脇にあるインターホンを押すと早口でまくしたてる。
「わたくしですわ。早く開けてくださいまし」
愛菜がそう急かすと大きな門がゆっくりと音を立てながら自動で開いていく。
「さぁ、行きましょう」
そう告げると愛菜は門の奥の家までの庭を歩いていった。俺と日花里もその後をついていく。そして家のこれまた大きな扉を開いて中に入った。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「…………」
びっくりした。家の中に、メイドがいた。とても綺麗なメイドが。
「これだから金持ちは……!」
再び日花里が怨めしい面持ちで愛菜を睨んでいた。
「そちらの方々は?」
……ん?「方々」?
「わたくしの友だちですわ。もてなしは結構。わたくしの部屋にいますから」
「ですが……そちらの男性は……!」
メイドさんが俺を見て構える。どうやら俺のことを知っているようだ。
「美紀(みき)。わたくしの友だちですわよ。下がりなさい」
「……っ。かしこまりました、お嬢様……」
悔しそうに美紀と呼ばれたメイドさんは頭を下げて廊下の端に寄る。
「ではわたくしの部屋に案内しますわ、こちらへ。履物は脱がなくてよろしくてよ。それと美紀、お父様が帰って来られたらわたくしの部屋に呼んでくださいまし」
そう言って奥に進んでいく愛菜の後に俺たちも続く。
「お嬢様に手を出したら許しませんよ、殺人犯……!」
美紀さんの脇を通る時、小声ながら強く告げられた。その忠義な行動に俺は頭を下げることしかできなかった。
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