第5話
廊下も白かった。
白は嫌いだ。母と父を…そして、恭介さんをも奪っていった色だから。
「おにーさん? 逃げないと死ぬよ?」
アゼミくんは手を引っ張り、迷う事なく足を踏み出した。
どうやら彼、ここを知っているらしい。たくさんの扉が壁を埋めているが見向きもしない。ただ、目的に向かって走っている。
彼が言うにはH's…シュー達は別次元の技術云々、らしい。まるで物語の幻想のようだ。いや、これも物語であるが。例えである。例え。
とにかく。
シューが捕まると、ちょっと都市が滅ぶらしい。
「どのくらいの都市が?」
「んー……中国だっけ、一番人多いとこ。あそこの人口が一気にゼロになるくらい」
分かりにくいのか分かりやすいのか。というか、それ国だろう?
「使い方間違えりゃあ、核兵器よりも残酷だ。とーちゃんも兄貴も……なんで、あんなの創ったんだろうな」
悲しい声。
人形師というのはイマイチ分からないが、シューがヤバいのは分かった。
「で、あのドア。だけど…」
俺がなにかに燃えていると、アゼミくんがそう言う。
彼が指したのは鋼鉄の扉。馬鹿でも分かる。鍵探した方が良いだろう。
しかし、アゼミくんは「蹴り開けれる?」と、問いかける。
「グリューンがいりゃあ楽だけど……あ、おにーさん。きったねぇ白衣の野郎に貰った紙。あるだろ?」
白衣?
少し思案して、ズボンのポケットに入れた紙を思い出す。
取り出して渡すと、不満そうにアゼミくんは顔をしかめた。
「あー……00の31の…よしよし上々。ちょっと待って」
ヘアピンをカードキーの穴? 線? まぁあれに差し込む。
開けれるわけ、ないだろう?
「ばっしゃうまのように、はったらけー あーほは死んでーらん、ららーららー」
物騒な歌だ。どうやら即興らしい。「ららーららー」が多い。
それにしても、追っ手が来ないな。いや、来なくて良いのだが……おかしすぎるだろう。
こんな怪しい施設のくせに、警備が酷すぎる…いや。怪しいから、人を雇えないのか?
そんなどうでもいい事を考えていると、嬉しそうな声が耳に入る。
枷の時より時間がかかったが、開いたらしい。アゼミくんが扉を押し開け、俺を黒い廊下へ招いていた。
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