海に綯交る

「ねぇ聞いて。今日、隣の席の子が……」

 聞いてと言われたから、いつものように大人しく愚痴を聞いていたら、突然隣の彼女が黙った。

「どうしたの?」

 私が彼女の顔を覗き込むと、彼女はパッと顔を上げ、私を見る。

「私、器の大きい存在になる!」

 そう叫ぶように宣言し、彼女は何処かへ走り去った。私は事態が飲み込めずに呆然としていたが、流石にそれが最後に聞く彼女の言葉になるとは思っていなかった。

 彼女はその後、失踪した。警察の捜索によると、海に面した崖の上に彼女の靴が揃えて置かれていたらしい。自殺と言われているがその動機も彼女の遺体も行方不明のままだ。

 結局彼女は見つからず、それはまるで海に蕩けたみたいで。私には、何となく分かるのだ。

「器、大きくなりすぎでしょ」

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