海に綯交る
「ねぇ聞いて。今日、隣の席の子が……」
聞いてと言われたから、いつものように大人しく愚痴を聞いていたら、突然隣の彼女が黙った。
「どうしたの?」
私が彼女の顔を覗き込むと、彼女はパッと顔を上げ、私を見る。
「私、器の大きい存在になる!」
そう叫ぶように宣言し、彼女は何処かへ走り去った。私は事態が飲み込めずに呆然としていたが、流石にそれが最後に聞く彼女の言葉になるとは思っていなかった。
彼女はその後、失踪した。警察の捜索によると、海に面した崖の上に彼女の靴が揃えて置かれていたらしい。自殺と言われているがその動機も彼女の遺体も行方不明のままだ。
結局彼女は見つからず、それはまるで海に蕩けたみたいで。私には、何となく分かるのだ。
「器、大きくなりすぎでしょ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます