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 カエデ、それが彼の名前だった。現職、少年兵剣術特別指南役と公国王位継承順位第3位である第3公女護衛役を兼任し、階級は上位騎士。本来なら、一師団を任せられるべき位だが、彼自身がそれを拒否している。


 彼を通称、救国の勇士と呼ぶ。この時代、他国との戦争に便乗して、異常発達した獣【サンプル】の被害に対応が後手後手だった。【サンプル】は時に龍のようであり、時に巨大な狼であり、時には骨だけの兵士であったりと様々であった。


 そのサンプルに公国が襲われたのが3年前。サンプルを戦争に活用した共和国の意図があったとの流言が流れたが、検証無きまま時は過ぎる。


 彼と姉のカナデが【サンプル】を駆逐した。その方法を知っているのは、現場を目撃した第3公女セレスのみ。故に憶測は憶測を呼ぶ事になるが、何らかにより【サンプル】の動きが停止したのも事実。また、市街戦でカエデの立ち回りを見た騎士や市井の人々の賞賛も「彼でしかあり得ない」という評価が駆け巡る。結果、彼は国民が選んだ救国の勇士であり、貴族中心の公国人事院は第3公女の推薦を仕方なく、飲むしかなかったのだった。

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