鬼がきた!

尾岡れき

1


「鬼が来たぞ!」


 という声にピクンと、自分でも青筋が浮き上がるのがよく分かった。少年兵達は、あれで聞こえないと思っているのだから微笑ましい。たしかに稽古が厳しいという実感はある。だが、あえてそうしているのだ。少年兵達が戦場に出た時に真っ先に死なない為に。


 この国の人が鬼を知っているというのは、間違いなく姉の仕業に違いない。ヤレヤレと思いながら、愛剣であるクレイモアに手をかけた。勿論、稽古は模擬剣で行うのだが。


 鬼教官と揶揄されている事は知っている。


 ――それでは、ご期待にお応えしましょう、か。


 長剣クレイモアが金属的な音をたてて、一緒に笑った気がした。



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