第10話 極寒稽古

 今年の寒さは猛烈で、かなりのストレスが身体にも心にも

容赦なく降りかかる。

それでも居合いの寒稽古に向かう。

左目の視力が一段と落ちてきたので、これで最後の

寒稽古かなと思いながら、刀を振る。


 先生もお歳をとられたなあ・・・。

袴姿は凛々しいが、どこかかしこに老いが見える。

相変わらずの激しい怒号が道場に飛び交い

静かな中にも、ピリリとした空気が舞う。


 帰り道が、これまた極端に寒い。

雪が、道路から吹き上げて舞う。

慌てて帰ることもない。

誰も待っては、いないのだから・・・。


 明後日は、母の十三回忌だ。

花屋に寄って、しきびと花を買う。


おふくろには、親不孝の連続で

誠に胸が痛む・・・。


墓に布団を着せることは出来ないのだから

もうどうしようもないと、諦める。

せめて花でも・・・・・・。


 冬の夜空は、誠に素晴らしい!

空気が澄んで、ぼんやりだが、自分にも多少の星が見えるのだ。


 あの星の彼方まで、自分は行ったのだ・・・。

それを話せば、狂人扱いされるだろうから

黙っていよう。静かに生きよう。


この世の先を具体的に知っていると言うのは

何やら奇妙な感覚ではある。


誰にもわかってもらえないが

それでいいのだ・・・・。







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