第7話 釈放

救急搬送後、入院。

MRI検査まで受けた。

結果はどこも異常なしであった。

驚いたのは、弱っていた視力が回復したこと。

それでも疲労はかなりのものということで

1週間入院した。


 その間、警察の取調べを3度も受けたが

精神不安定者の自殺未遂らしいで処理された。


 身元引受人がいなくて苦労したが

子供の時からの事情を説明すると

それ以上の追求はされなかった。


 アパートの部屋にたどり着いた時はさすがに気が抜けて

まるまる30時間ぐらいぶっとうしで寝た。


元々天涯孤独で、誰に遠慮がいるわけでもない。


 自分が体験した世界は、一体なんだったのだろうか・・・。

いつもその思いが湧いてくる。

あれは、夢ではない。

しかし、今、それを思っても何も生まれない。


まずはとりあえず働かねばならない。

預金はすっかり底をついた。


台所を探すと、随分前の素麺が出てきて、それを食しながら

1日過ごした。

何はともあれ、命を落とさずに済んだ・・・。

けがもしていないし

病気にもなっていない。


戻ってきた杖をつきながら

職探しに町に向かった。


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