第4話 異次元世界
自分の人生は、完全に終わったと思い込んでいたが
続きがあった。
こんな暗闇で、これから、ずっと過ごすのか・・。
いっそ死んでしまいたいと考えても無益である。
死んで此処に来たのだから、これ以上は死ねない。
試しに舌を思い切り噛んでみたが、痛くも痒くも無い。
そう言えば、生きてた頃と随分感覚が異なる。
痛みや寒さ、暑さに極めて鈍感になっている。
一応足はある。しかしどうにも頼りない。
あるにはあるが、力が入らない。
形だけの脚である。
暗闇に慣れるに従い、周りにいる連中の顔や表情が見えて来た。
皆一様に無気力な、情けない表情をしている。
誰も喋らない。視線も合わせないし合わない。
終始無言で、ただただ壁にもたれている。
ああ、死んだら何もない無だと思い込んでいたが
こんな世界があったのか・・・。
自分は、これから一体どうなるのだろうか・・・。
待てよ、待て!あれっ!目が見えるぞ!
緑内障で落ちていた視力が蘇っている!
何ということだ!
この暗闇の中で、周りの人間が見える!
大いなる発見ではあった。
何といっても五感のひとつを取り戻した感激は大きかった。
しかし、臭覚が効かなくなっている。
何も匂わない・・・。
耳はどうだ?
耳は聞こえる。
が、きわめて音が少ない。
静かな世界だ。
腹は一向に減らぬ。食べたいとも思わない。
食べると言う行為がこの世界にはないようだ。
・・・と、言うことは、食べる為の苦労はないという事だ。
娑婆のような苦労をしなくて済む。
何しろ娑婆では、食べる為にあらゆる苦労をした。
もうその苦労をしなくて済みそうだ。
眠たくもない。
睡眠と言う概念が、この世界にはないのか・・・。
いずれにしても、こうなったら開き直るしか、手がない。
なるようになる・・・・。
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