探索
その夜は兵士二名を拘束し、戦死者の埋葬などをした。
次の日の朝、日高達は作戦会議をしていた。
話し合っているのは村の奪還についてだ。
ティーガーがあればこの世界に敵はいない。村の奪還ぐらいティーガー一両でなんとかなる。そう思っていた。
とある事を聞くまでは。
「え?! 魔法があるの?!」
そう、どうやらこの世界には魔法があるらしいのだ。
昨日の戦いで皆弓矢を使っていたので魔法なんてないと思ってた。
これでは流石にティーガーだけでは勝てない。
仮にティーガーだけで突っ込んでみたとしよう。
火の魔法を使われて弾薬庫が爆発、乗員全滅。
そんなことになりかねない。
となると、勝つ為にはどうしても歩兵が必要になる。
なので瓦礫の山へ武器を探しに行くことになった。
探索メンバーは六人。
日高、へルック、リーフデの三人と、青年、少年、少女だ。
残りの人は捕虜の見張りなどをするために残ることになった。
出発前
「まだ自己紹介してなかったな。俺は日高道行。門 によってこの世界にきたんだ。よろしく。」
へルックとリーフデ以外の名前を知らないままではまともに探索も出来ないため親睦を深めるためにも自己紹介することにした。
三人は日高が異世界から来たことに驚いていたようだが、しばらくすると青年が前に出てきた。
「僕の名前はジール。 こちらこそよろしくね。」
次に少年が出てきた。
「ボクはムートだよ!」
最後は少女。
「私はパッシーよ。狩人をやっているから戦いは心配ないわ!よろしくね!」
自己紹介を終えた六人はティーガーに乗り、瓦礫の山へと向かった。
道中、ティーガーの運転をしている日高はふとあることを疑問に思った。
(なんで俺、これ動かせてるんだ?)
昨日は慌てていたため考えてなかったが、よくよく考えればおかしい。
彼の記憶ではティーガーなんて乗ったこともない、というか実物を見たことすらないはずだ。
それなのに動かせている。一体どういうことなのだろう?
そんなことを思いながらもティーガーを走らせるのであった。
瓦礫の山に着いた一行は二人一組に分かれて探索を始めた。 前回南側は見て回ったのでそれ以外のところを探すことにした。
へルックとムートは東側、リーフデとパッシーは西側、そして日高とジールは北側だ。
今回の探索で探すのは主に銃。
戦車を護衛する人に持たせるためであり、十人ちょっとしかいないこちらが数百もの敵に勝つためにはこれが必要不可欠なのだ。ちなみに銃がどんなものかはここに来るまでに簡単に説明してある。
北側に回った日高とジールは早速探索を始めた。
「おっ、あったあった。」
男二人なのでさくさくと進む。
今回見つけたのはAK-47。ソ連が開発したアサルトライフルだ。
耐久性に優れ、劣悪な環境でも作動する傑作銃である。
「見つかったのかい?」
少し離れた場所を探していたジールがやってくる。
「ええ。良いものが見つかりましたよ。」
と言ってジールにAKを渡す。
「っと。へー、これが銃か。以外と重いんだね。これは使えるのかい?」
「もちろんです。撃ってみます? 」
「いいのかい? それじゃあ使い方を教えてくれよ。」
「いいですよ。 まずは・・・」
ジールは説明の通りに銃を構え、撃つ。
タタァン!
軽快な音をたて弾が飛んでいく。
「おおー。凄いねこれ。これがあれば誰にも負けない気がするよ。」
「でしょう?まあ、弾が切れたらただの鉄の筒ですけどね。」
「そうなのかい? じゃあ弾も探さないといけないね。」
「そうですね。 沢山見つかるように頑張りましょう。」
二時間後
ある程度見つかったので、ティーガーを使って探し出した物を南側に集めることにした。
まず、自分達の分を載せる。北側で見つけたのはチェコスロヴァキアの軽機関銃ZB vz.26、日本の三八式歩兵銃、さきほどのAK-47、銃弾,etc。ティーガーの燃料も見つけておいた。
それらを載せた後、次は東に回る。東側ではへルックとムートが座って休んでいた。
「お待たせしました。なにか見つかりました?」
ハッチから顔をだして声をかける。するとムートが走ってきた。
「日高さん! 銃は見つかりませんでしたが、すごい物がありましたよ!」
ムートの指さす方をみればそこには一台の車両があった。
九七式軽装甲車 テケ。
日本陸軍の二人乗り装甲車だ。
武装も装甲もティーガーとは比べものにならないくらい貧弱だが、この世界では十分活躍できるはずだ。
それに乗員も少ないので人数が少ない日高達にはちょうどいい。
「おお! たしかにすごいな!」
「でしょう?」
ムートは嬉しそうだ。
「いやいや、探すのはともかくここまで持ってくるのが大変じゃったぞ。ティーガーとは中の様子も操縦の仕方も違ったからのう。」
その言葉に日高は驚く。
「え? 操縦の仕方なんて教えてませんよね?」
「長年の勘じゃよ。 お前さんの運転もみたしな。」
「嘘でしょう・・・」
取り敢えずテケはティーガーとつないで運ぶことにして、四人は西側へ向かった。
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