説明

「まずはお前さんのことについて話そうかの。」


へルックはゆっくりと話し出した。


「おそらくお前さんは 門 によってここへ来たんじゃろう。」


「門?」


「そうじゃ。 門とはこの世界と別の世界を繋ぐ穴のようなものじゃ。時々現れては色々なものを運んでくるのじゃ。」


「あそこを見て。」


リーフデが言う方を見ると、緑ばかりの景色の中で異様なものが遠くに見えた。


簡単に言えば瓦礫の山だ。


「あの場所には何故か知らんが門がよく現れるのでな。 あのようなことになるのだ。」


「あんな風な瓦礫の山が出来るのは此処だけですか?」


「ここら周辺ではあそこだけじゃな。 だか他の場所にもあるぞ。」


一呼吸置き、またへルックが言う。


「まあお前さんが村の中心で現れたのは幸運じゃな。 あそこより北側に現れたら戦いに巻き込まれてたじゃろうからな。」


「そもそもその門とやらに連れて来られた時点で不幸な気がしますけどね。」


日高の言葉にへルックは笑った。


「それもそうじゃな。 さて、次はその戦いについて教えんとな。」






「儂らが今いるのはラクシア島。この島は南北二つの国があるのじゃ。この戦いは南のフリースラント王国と北のリエージュ王国によって起こされておる。」


「私達のいるのはフリースラントよ。」


へルックの説明にリーフデが付け加える。


「ほんの半年前までは平和だった。けどある日、いきなりリエージュが攻め込んできた。」


「なんでまたそんなことを?」


日高の質問にへルックが答えた。


「おそらくリエージュの王が変わったのが原因じゃな。 噂ではとても欲の強い人だと言われておる。今回攻め込んできたのもフリースラントを取り込むためじゃろう。」


「なるほど、そういうことだったんですか。 つまり今逃げてるということは」


「うむ、リエージュはフリースラントより兵力が多いからのう。西は善戦しているようじゃが、こちら側は苦戦・・・いや正直負けておる。撤退続きで国境から離れていた儂らの村まで攻め込まれてしまった。 」


「村はもうすぐ敵のものになる。この国も後一年もつか分からない。」


説明する二人の顔はとても悲しそうだった。







夕方、これ以上歩くのは無理という事で野営することになった。


村の人達が休む中、日高は一人歩いていた。


「ここだな。」


日高が向かっていたのは先ほど見えていた瓦礫の山。逃げている間に近づいていたので、近くまで来てみたのだか。


「でかいな。 下手な山より高いぞこれ。」


遠くから見えていたので大きいことは分かったいたが、近くにくると予想以上大きかった。高さは数百mはあるだろう。


日高は驚きつつも瓦礫の山を見て回ることにした。


「これは・・・懐中電灯だな。 おっ点いた。」


瓦礫の山には日高の前の世界で使っていたものから、見たこともないし用途も想像がつかないものまであった。


「火じゃあいつ消えるか分からないからな。持っていこう。」


使えるものを探しだしていく日高。 ふと後ろから足音が聞こえる。


懐中電灯をそちらにむけると、リーフデがいた。


「ん?どうした?」


「夜になると獣が出るから、一人じゃ危ない。」


「そうか。それじゃあ暗くなる前に戻らないとな・・・っとなんだ?」


足になにか当たった。


「これは拳銃? しかもワルサ―P38か」


ワルサーP38。第二次世界大戦でドイツ陸軍が使用していた拳銃だ。


「それはなに?」


リーフデが訊ねてきた。


「これは拳銃・・・っても分からんか。 簡単に言えば鉄の球を飛ばす道具だな。 これがあれば獣も倒せそうだな。 当たればだが。」


「???」


「まあ分からんわな・・・ん、弾は入ってるな。 よし、じゃあ百聞は一見にしかずってな。 見てな。」


日高は近くにあるそれなりに太い木に狙いを定める。


そして・・・


パァン!!


大きな音をたて、弾が発射される。弾はきちんと木に当たってくれたようだ。


「こんな感じだが、どうだ?」


リーフデを見ると、彼女は驚いて固まってしまっていた。


「あー、驚かせちゃったか。 すまんすまん。」


「ん。大丈夫。 それよりも凄い道具ねそれ。」


「だろ。 まあ人を殺すための道具だから誇れはしないけどな。」


「自分の命を守るための道具と考えれば問題ない。」


「ものは考えようだな。 じゃあこれはリーフデにあげるよ。使い方は今度教えてあげるから。」


「え、あ、ありがとう。 でもいいの?」


「気にすんな。もう一個ぐらいすぐ見つかるだろ。 取り敢えず野営地に戻ろう。暗くなるし、へルックさんも待ってるだろうからな。」


そう言って二人が野営地に戻ろうとした時、


「リエージュが来たぞーーー!!」


遠くから声が聞こえた。

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