退避

日高は老人についてその場から離れることにした。


その道中、


「そういえば」と老人が切り出す。


「名を聞いてなかったな。 儂はへルック・ハーグという。お前さんは?」


「日高道行と言います。」


「ミチユキか。良い名だな。」


自己紹介をしつつ歩き続けると多くの人達が見えてきた。


「あの人達は全員?」


「ああ、みな逃げているのだ。とはいってもこの村の大半の人間はもうとっくに遠くに逃げておる。今逃げているのはなんらかの理由があって村に残っておった者だけじゃ。」


その人ごみの中から一人の少女がこちらに走ってきた。


「おじい。」


少女はへルックに声を掛けた後、日高に怪しげな眼を向けた。


「おじい。この人は?」


へルックは答えた。


「さっき村の中心でたたずんでおったから一緒に逃げてきたんじゃ。 怪しい者ではないから心配するな。 ほれ名を教えてやれ。」


少女は日高の方を向き、


「リーフデ・ハーグ。」


と言った。


リーフデという少女は中学生くらいの見た目で銀色の髪をしている。背は日高より頭一つ分くらい低い。


「俺は日高道行だよ。よろしくね。」


「ん。よろしく。」






群衆と合流した日高達は、そのまま群衆と村の外へでた。


「これからこの先にある街へと一旦向かうぞ。かなり遠いがそこなら攻めこまれてもしばらく耐えられるはずじゃ。」


そこで日高は質問した。


「そういえば、攻めこまれてるって一旦何が起きてるんですか?」



へルックは答えた。


「まだ教えてなかったな。街まで時間もたくさんあるし、その事とさっき言ったお前さんのことも教えよう。」

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