英雄の印


拍手喝采が止んで少しした頃、男の子がジェイソンに駆け寄って来た。


妹ちゃんもまた、お兄ちゃんを追いかけてジェイソンに駆け寄って。


「にーちゃんってヒーローなんだ!すげー!」


男の子はそう言いながら、ジェイソンの腕に触れた。


「ヒーロー、かどうかは僕にはわからないけど…皆がそういうならヒーローなのかもしれない」


「まぁ、誰もが皆、誰かのヒーローではあるんだけどさ!」


ジェイソンは目線を合わせるようにしゃがんで、笑った。


「じゃあ、ぼくもヒーロー!?」


男の子はびっくりした顔をしてジェイソンを見つめていた。


「そう、君もヒーローさ…妹にとって、お兄ちゃんは一番のヒーローなんだ」


男の子は横に居る妹を見つめて…その妹のとても小さな手を、小さな手で握り締めた。


「…ぼく、将来はにーちゃんに負けないヒーローになるよ!」


そう言った男の子の表情は、凄く真剣だった。


「きっと、君なら…強くて優しいヒーローになれるよ!」


ジェイソンはそう言って笑いながら、男の子の頭を優しく撫でた。


すると、妹ちゃんがジェイソンに近よって…ぎゅっと抱きついた。


「どうしたのかな?」


ジェイソンは妹ちゃんの頭を優しく撫でてあげていた。


「おにーちゃ、すごくあったかいの」


「とってもね、やさしいにおいがするの」


妹ちゃんは抱きつくのをやめ、男の子の横に戻りながらそう言った。


「ありがとうね」


ジェイソンはそう言って笑った。


「ねえねえにーちゃん、隣の女の人って誰?」


男の子が私とジェイソンを交互に見ていた。


「彼女?彼女は…うーん、そうだなぁ…にーちゃんにとって何にも代え難い、大切な人だよ」


「側にいてくれるだけで、にーちゃんは何倍にも強くなれるし…凄く笑顔になれるんだ」


その言葉に、私はまた顔が素晴らしく真っ赤になって。


それを見たジェイソンと兄妹ちゃんが、ケラケラと笑っていて。


「ジェイソンの馬鹿ー!」


またも最高潮に恥ずかしくなって、涙目になりながらジェイソンを軽くバシバシと叩いた。


「いてっ、痛い、痛いよケルシー、ごめんって!」


ジェイソンがわざとらしく痛がって謝り、私はジェイソンの腕にくっついて。


「にーちゃんとねーちゃん、すっごく似合ってる!」


男の子は楽しそうに笑っていて。


「ねえ、おにーちゃはおねーちゃとけっこんするの?」


妹ちゃんがいきなりそんな発言をするもんだから、2人揃って顔が真っ赤になってしまった。


「け、結婚…か…そうだね、それはもう少し時間をかけて考えるつもりだよ」


ジェイソンは真っ赤になった顔で、笑顔を浮かべて。


そんな話をしていれば、いつのまにかジェイソンの周りは子供達だらけになっていた。


ジェイソンは1人1人と触れ合い、だっこしたりおんぶしたり肩車したりと大変そうだけど…凄く笑顔で楽しそうだった。


私はそれを見て、凄く幸せな気持ちになって。


安心して席に戻ると、皆に色々と…怒られたり褒められたり心配されたりして。


わいわいと話した後、皆で注文し直して夕食を食べた。


もちろん、ジェイソンも一緒に。




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