腕のリハビリ


1ヶ月を経て、両腕と鎖骨付近まで皮膚移植が進んだの。


そこから1週間、安静に皮膚の生着を待って。


そして胸元や腹部などへの移植もある為、安静のまま腕のリハビリをすることになって。


手を横に伸ばしたり、手首や肘の曲げ伸ばしや肩を動かしたりというリハビリだったわ。


そして、拘縮が起きぬように湿潤成分のクリーム(皮膚が固まるのを抑える為のクリーム)を数時間に一回塗られていたの。


そんなリハビリを続け、やっと最初の皮膚移植が終わって。


そこからまた1ヶ月、リハビリが続いたわ。


3ヶ月近くも寝たきり安静だったから、ジェイソンの自慢だった筈の体力はかなり落ちてしまっていた。


そう、歩くリハビリや軽い筋トレですら汗だくで疲れるぐらいにはね。


「はー…体力ってすぐに落ちちゃうもんなんだねえ」


ジェイソンはタオルで顔や首を拭きながら、大きく息を吐き出した。


「そりゃそうよ、ジェイソン」


マーサはそう言ってケラケラ笑った。


「普段、1日風邪でダウンするだけで次の日キツいじゃない!」


なんてマーサが言えば、ジェイソンは納得したような表情で。


「言われてみれば、確かにそうかも…流石マーサだね、頭良いや」


ジェイソンはそう言って、いつものようにふにゃりと笑った。


「リハビリはいつまでだっけ、ジェイソン」


2人のやり取りがなんだか面白くて、笑っていた私は不意に気になって尋ねた。


「来週までだよ、そっからは…どうしようか」


ジェイソンは困った表情を浮かべた。


すると、マーサが何かを思い出したようにジェイソンに話す。


「そうそう、フルトンさんが仕事は今まで通りウェイターのままだし、普通に来て良いって言ってたわ…もちろん、身体や体力と要相談での話よ?」


「短い時間からゆっくりゆっくり、ね?」


マーサが笑うとジェイソンも笑い、私も笑う。


「…僕、凄く周りに恵まれてるねぇ」


少しして不意にそう呟いたジェイソンは、涙ぐんでいた。


「私も、良くそう思うわよ?」


マーサが目元を拭いながら頷く。


「うん、私もよ…最近凄くそう感じるわ」


私もつられて涙ぐんで、目元を拭って。


「僕、ワイルドキャッツや皆には頭あがんないや」


なんて言うジェイソンがなんだか可笑しくて、3人で笑った。



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