皮膚移植


ジェイソンが目覚めて2日目、やっと火傷の部分に皮膚移植をする事になった。

(昨日まで服片や壊死部の確認があったからね)


皮膚移植するとはいえ、ジェイソンの場合は顔と手首から先以外の上半身のほぼ前面が皮膚の無い状態、というかなり広範囲のⅢ度熱傷。


一回での移植はまず無理の為、今回移植する右手首から下の部分以外は人工皮膚で埋め合わせつつ、機会を見て本人の皮膚を移植し直す形になった。


しかし、皮膚移植にも色々とあり、移植してもはがれたりひきつれたり、出血やジェイソンみたいな場合は感染症なんかの危険もあり、そして一生涯、定期的に皮膚移植をしなければならない上に火傷痕がずっと残る、と詳しく説明された。


私以外の女子陣はほぼ理解して、私はマーサからわかりやすい説明を聞いて何とか理解したけど、男子皆がわからなすぎて呆けていた(チャドに至っては寝てた)のは言うまでも無かったわ…


その後、皮膚移植は何とか終わり、ジェイソンが病室に運ばれた。


身体中包帯ぐるぐる巻きで、上半身だけ見ると何だかミイラを思い出したのはジェイソンには内緒にしとかなきゃね?


病室に運ばれてから1時間しないうちにジェイソンは目を覚ました。


「…移植、終わった?」


ジェイソンは眠たげな目で私を見つめながら、ゆったりとした声音で尋ねる。


「ええ、終わったわ」


私が笑顔を見せれば、ジェイソンは笑って。


「そっか、良かった…」


少しホッとしているジェイソンに、ゆっくりわかりやすく、皮膚移植の諸々を伝えた。


バスケ部の例に漏れず、おバカ(地頭自体は悪く無いってテイラーが言ってたけど)なジェイソンだから、沢山の説明で頭がパンクしかけているようだった。


「あ、頭がぐるぐるしてきたよ…」


なんてぼんやりした表情で呟いていた。


「簡単に言えば、皮膚は移植…貼り付けたけど、皮膚につくかとかはわからないから成功したとは言えないって事よ!」


テイラーが結構イラつきながらジェイソンに説明すれば、ジェイソンとジークはやっとわかったような表情をしたが、その隣でチャドやライアンは首をひねっていた。


しばらく会話していたら、不意にジェイソンの表情が曇った。


「どうした?」


チャドが尋ねれば、ジェイソンは酷く表情を歪めていた。


「痛…痛い…背中、背中が…っ!」


腕に移植する皮膚を厚めに背中から持ってきた為に、背中に出来た手術痕に激痛が生じているようだった。


「しかたねーよ…背中の皮膚を厚めに切って、右腕に移植したんだからよ…」


チャドは複雑な表情でジェイソンを見つめていた。


「うぅ…っふ、ぐ…ふ、ふぅ…っ…!」


ジェイソンは辛そうに背中に走る激痛に呻いていた。


その後、身体が弱ったのか皮膚移植の際に雑菌が入ったのか、火傷痕の0にはならない雑菌の所為かはイマイチわからなかったが、ジェイソンは38度の熱が出てしまった。


ジェイソンは、背中は痛いわ具合は悪いわ身体はキツイわのコンボで涙目になり、そのうちに色々耐え切れなくなったのか、身体をごろごろバタつかせようとした。


バタつけば身体に移植したばかりの皮膚がくっつかなくなるため、マーサがナースコールを押してナースが来るまでの間、ジークとチャドが足を、ライアンと私で手を握って抑えた。


ナースさんはどうしようもないと告げられたものの、軽い解熱剤を処方してくれた。


ジェイソンがゆっくりと薬を飲んだ後、しばらくしたら薬が効いたようで…かなり落ち着いていて、数分後にはすやすやと眠っていた。


私達はそれをみて、ホッとひと安心して静かに笑った。

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