嘘と本当
泣き止んでからしばらくして、携帯を取る。
そして、テイラーに電話した。
少しコールした後、電話に出てくれた。
『もしもし、ケルシー?どうしたの?』
テイラーは心底不思議そうな声だった。
「なんか、お話したくて…つい」
本当の理由を誤魔化して、明るく話した…つもりだった。
『…ジェイソンと何かあったわね?』
でも、テイラーには早々にバレてしまった。
一瞬、本気でテイラーって超能力者なんじゃ?とか考えちゃったぐらいにはびっくりした。
「…ジェイソン、今日ね…仕事だって」
また、泣きそうになるのを必死に我慢する。
『え!?ジェイソンが今日仕事!?』
テイラーは心底驚いたらしく、私の鼓膜が破れたかと思ったぐらいの声量で叫んだ。
「…うん、待ち合わせの時間を過ぎてもジェイソンが来なくて、心配になって電話したの」
「そしたら、しばらくして折り返しの電話があって…今日、仕事って」
何度も目を拭いながら、何とか話す。
『…ちょっと待ってて、すぐ折り返すから』
テイラーは少し怒ったような声音でそう呟けば、電話を切って。
15分後、再度テイラーから電話がかかって来て。
『ごめんごめん、チャドに電話してたのよ』
『昨日電話で、久々にジェイソンとジークと飯食った!って話してたの思い出して…そしたらまぁ、ビンゴだったのよ!』
『チャドが言うにはジェイソン、チャドやジークにも明日は休みでケルシーと久々にデートするんだ、って凄く喜んでたみたいよ?』
…喜んでた?ジェイソンが?
なんだか、頭の中がぐちゃぐちゃになってきていた。
『だから、ジェイソンが自分から故意に仕事を入れた訳じゃない事は確かね』
テイラーはそこまで話すと、少し間を置いて。
『恐らくだけど、ラヴァースプリングスカントリークラブの方で何かあって…人数が足りなくなって、ジェイソンが休み返上して仕事する羽目になったんじゃないかしら』
…ジェイソン、嘘ついてなかったんだ…なのに、私…あんな事言って…
思い返して、自分がジェイソンに言い放った言葉の酷さに、身体の震えが止まらなくなった。
『…ねぇ、ケルシー』
『もし、ジェイソンに連絡し辛かったらマーサに連絡入れてみたら?マーサでワンクッション挟む、って言ったら言い方がちょっと酷いかもだけど…』
テイラーの言葉が余り頭に入って来なかったけれど、どうにか返答して…お礼を言ってから電話を切った。
私はその場に崩れ落ちるように座り込み、震えの止まらない身体を抱きしめた。
きっと、ジェイソンに嫌われた。
あんな酷い事言ったんだから、仲直りなんて出来っこない。
もし、謝るなら…なんて謝れば良いの?
そんな感情が頭をぐるぐると渦巻いて、どうしようもなくなった。
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