デート前夜


学校から帰宅して、机に鞄を置く。


鞄からプリントを取り出して整理しつつ、五線紙と筆箱を取り出す。


「あー…、そういえばプリント幾つか書かなきゃいけないんだっけ…」


明日のデートに気を取られて綺麗に忘れそうになったけど、何とか思い出してプリントを書き込む。


それは、12月にあるピアノの発表会に関するプリントで。


出るか出れないかだとか、出れないなら理由だとか、諸々書き込まなきゃいけない。


そのプリントを早々に書き終わらせ、ファイルに入れて鞄に直す。


と、時間を見れば丁度良い時間だったから、夕食を食べ、少し休憩してからお風呂を済ませ、歯磨きもして。


それから部屋に戻って、明日に備えてお出かけようの鞄を取り出し、財布やらなんやらを入れ替えていた。


すると、不意に携帯が鳴った。


表示されていたのはジェイソンで、私は慌てて電話にでる。


『こんばんは、ケルシー』


ジェイソンの優しい声が聞こえてきた。


「こんばんは、ジェイソン…仕事、終わった?」


私が尋ねると、ジェイソンは少し笑った。


『大丈夫だよ、今は全部済ませて部屋でのんびり中だから!』


明るいジェイソンの声に、私も明るくなる。


「良かった…」


私は安心して、ホッと胸を撫で下ろした。


『あの、明日の事なんだけどさ』


不意に切り出して来た台詞に、不安が過って。


『10時ごろ、そっちに迎えに行くよ』


ジェイソンのその言葉に、私の胸は大きく高鳴った。


かなりドキドキして、ジェイソンに聞こえてないか心配になるぐらいには、高鳴ってる。


「う、うん…私、5分前に外で待ってれば良い?」


私がそう尋ねると、ジェイソンは少し間を置いてから話し出した。


『うん、そうしてくれるかい?』


私は電話越しに何故か頷いてしまって。


「ねえ、ジェイソン…私、明日の事考えると…眠れなくなっちゃいそう」


私がそんなことを話せば、ジェイソンは笑って。


『僕もだよ、ケルシー…明日の事考えるとさ、胸が凄くドキドキして、眠れなくなる』


ジェイソンと同じ気持ちなのが嬉しくて、顔が綻ぶ単純な私。


「二人共同じ気持ちなんて、不思議ね」


私がそう言うと、ジェイソンは照れ臭そうに笑った。


『…好きだから、会えるとわかるだけで…凄くドキドキするんだね』


その言葉に、私の顔は一瞬で真っ赤になった。


「…すっ、す、好き…?」


急な言葉にびっくりしてどもる私。


『うん、僕はケルシーが好きだよ』


もう一度紡がれた言葉に、恥ずかしさがMAXになる私。


でも、私だってジェイソンに負けないぐらい…


「わ、私だって…ジェイソンが…す、好きよ?」


恥ずかし過ぎて死ぬかと思ったけど、何とか言葉にして伝えられた。


『ははっ、ありがとうケルシー…僕、なんだか恥ずかしいや』


ジェイソンも、照れているのが良くわかる話ぶりになっていた。


「私、恥ずかしくて死ぬかと思っちゃったわ」


なんて恥ずかしさ冷めやらぬまま言っちゃう私。


『僕もだよ…っあ、そろそろ時間マズいから…とっても名残惜しいけど…切っちゃうね』


振り返って時計を見れば、11時を回っていて。


「うん…また明日ね、ジェイソン」


『じゃあ、ケルシー…また明日』


そう挨拶を交わして電話を切って。


ベッドに携帯を投げてから鞄の準備を終わらせ、明日の帽子を置いてからベッドに潜り込んだ。


目を閉じて、眠りにつこうとした、けれど。


電話での会話を思い出し、胸のドキドキが止まらない。


その上、明日の事を考えると余計ドキドキして眠れなかった。


私がようやく寝付けたのは、夜中の2時だった。

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