第一

第4話ホテルですかっ?…

 寮の入り口にはすらっとした女性が立っていた。その女性は大人の女性という感じだ。少し風が吹くと、長い髪をなびかせる。全体的に黒色の服で、ハイヒールを履いていたため余計に大人ということを主張していた。

「おはようございます。さゆりといいます」

「おはようございます」

『おはよぉですぅ~』

 さゆりが挨拶をすると、蓮と薫も挨拶をした。

「私は『遊戯専門学校(ここ)』で教師をしています。それで、あなたたちの名前は何ですか?」

『ワタシは北花薫、それでぇ、こっちが蒼城蓮ですぅ!』

 薫が元気にさゆりの問いに答えた。

「分かりました。こちらが寮のルームキーになります。部屋は二階になります。部屋に入っていただいたらゆっくりしていただいて構いませんが、明日十二時には一階にある広場に集合なので遅れないようにしてください。何か質問はありますか?」

『特にないですぅ! レンくんはぁ?』

「――ん、……あ、とくには……」

 蓮は話は耳に入っていたが、話が振られるとは思っていなかったため少しの沈黙があった。

「そうですか――」

 さゆりはもう少し二人と話していたかった……が、少し我慢し、

「――二人に期待していますよ。もちろん他の先生方も期待していましたよ!」

 少し色気のある声だ。

『ありがとぉですぅ! それではぁ~』

「ありがとうございました」

 蓮と薫は軽く一礼し、寮の中へと入っていった。

 二人は寮に入る。すると、そこに待っていた光景は――。

 まるで、高級ホテルのようだった。中には受付のようなところに女性が二人立っていた。また、一階の天井には金色に輝くシャンデリア。入って右手には、大きな扉があった。そこが広場なのだ。

 蓮と薫は驚愕した。

「「――」」

 二人は時間を忘れ、しばしに沈黙。その後、受付左側にエレベーターを見つける。

『レンくん、二階にいこぉ?』

「う、うん」

 二人はゆっくりとした足取りでエレベーターに乗った。エレベーターの中に入ると、階数のボタンが五階までもあった。二階には今年一年生の部屋。三階には四年生。四階には三年生。五階には二年生の部屋だあった。蓮は二階のボタンを押した。

 エレベーターは少しも音を立てず上へ上る。その時、

『ねぇねぇ、レンくん?』

 薫が蓮に話しかける。

「な、なに……?」

『レンっちって呼んでいぃ? もちろん薫のことはどうやって呼んでもいいよぉ? サンづけとかは、ちょっとぉ、いやだけどぉ……』

 それはあまりに唐突だった。

「――……」

 蓮に少しの沈黙があった。

 その少しの時間で、二人が乗っていたエレベーターは到着し、前のドアが開く。

 蓮は体が固まっていた。薫はエレベーターから先に降りる。

「……」

 蓮はあまりに遅かった。そのため、エレベーターのドアは閉まろうとする。

 それに気づいた薫は慌てて蓮の手を引っ張り、エレベーターからだす。その反動で蓮は正気を取り戻した。

「――あ、で、質問なんだっけ?」

『だぁ~かぁ~らぁ~、レンっちってよんでいぃ? いや、もうよぶぅ~!』

 薫は決めつけてから、部屋に向かって歩きだす。

「あ、そんなことだったか。いいよ」

 蓮は自分に羞恥心を感じ、顔を真っ赤に染めた。その後薫について行った。

『ありがとぉ! さすが、レンっち!』

「う、うん」

 ゆっくりと歩いていた二人は、部屋の前についた。その部屋番号は207号室。

 二人がもらったルームキーはカードだ。しかし、そこにはカードの差込口はない。ただ、扉の取っ手のすぐ上には黄色く長方形に光っている、ちょっとしたでっぱりがある。

 蓮はそこに手にしていたカードをかざした。すると、音が鳴った。鍵が開いたのだ。そう、そこはまるでゲームセンターで使えるカードのような鍵。すこし、先端技術を取り入れていたのだ。

 蓮はそのまま、扉を開ける。

 そこにもすごい光景が二人を襲った。そこもすごい手は込んであったことは分かった。それは、ごみが落ちていなかったり、しわのないベッドの掛布団などから分かった。

 蓮と薫、二人のこれからの部屋には、リビング、キッチン、寝室、お風呂、ゲーム部屋、そして一人一部屋あった。

 蓮と薫は初めに自分の部屋に行った。

 蓮は自分の部屋に行ってもやることがなかったため、リュックだけ置くとすぐにリビングへと移動した。

 リビングについた蓮は冷蔵庫を最初に確認した。その冷蔵庫には少量の飲み物しか入っていなかった。

 少しがっかりした蓮のもとに薫が来た。

 その薫は着替えを済ませていた。さっきまでの白のワンピースと色は全く違い、雰囲気も決して似てはいないピンクのパーカー。しかし、薫の少し幼いイメージは何も変わらなかった。

 リビングには大きなテレビがあった。大きさは80V型だ。その大きなテレビの前にはふかふかなソファ。その横には小さな机があった。また、その部屋には食事をするとき用のテーブルもあった。そのテーブルの上には本になった説明書のようなものがあった。

 蓮はその説明書を手に取り、読み始める。すると、いろいろなことが書いてあることが分かった。

「か、薫? ゲーム部屋いかない?」

 蓮は薫と話すことに少しづつではあるが慣れていく。

『うん! いいよぉ!』

 薫はエレベーターで質問を聞き直すこと以外で、初めて蓮から話しかけられたため少しうれしくなる。

 そのまま、蓮を先頭にしゲーム部屋に行き、蓮は何の躊躇もなくドアを開けた。

 そこには蓮が、薫が使っていたゲーミングPCが置いてあった。それも、寮に入る前二人が使っていた時と同じように。二つのゲーミングPCは少し斜めにし、横並びに置いてあった。

『すごいねぇ!』

 薫は興奮を抑えきれていない。

「にーさんもこんなところで……」

 蓮は薫の言葉が耳にはとどいていなかった。そして、薫を無視するように小さな声でつぶやいた。

『レンっち? なにかいったぁ?』

「ん――あ、ごめん。なんかいった?」

 蓮は今薫に気づいた。

『もぉ~、れんっちぃ~! こんなかわいい子を無視してぇ~』

 薫は少し頬っぺたを膨らませた。しかし、怒りの感情などなくかわいさだけが滲みでていた。

「ごめん。ほんと」

『仕方ないなぁ~。許してあげるぅ』

「あ、ありがとう」

 蓮は薫のことを本当に人間なのかと疑えるほどかわいかった。

『それじゃぁ、リビングに戻ろぉ~?』

「うん――」

 蓮と薫はゲーム部屋を覗いただけで、PCを立ち上げることはしなかった。そして、二人はリビングに行く。――が、リビングに行ったところで二人はやることがなかった。

『こんなにおおきなテレビがあるから映画でも見なぃ?』

 薫はテレビに興味津々だ。

「いいよ、べつに……」

 蓮は何でもよかった。そのため少し返事が冷たくなる。それを薫は敏感に感じ取る。

『なんかつめたぁ~い』

 こんな時でも薫は笑顔を絶やさない。薫はとても人ができていた。

「ごめんごめん」

 少し笑いながら蓮は謝った。

『それじゃぁ、ブルーレイもってくるねぇ?』

 薫が言うと蓮の返事を待たず、自分の部屋に取りに行った。

 リビングで一人になった蓮は飲み物を準備しようと冷蔵庫を開けた。そしてそこからペットボトルのジュースを二本取り出す。そのジュースをソファの隣の机においた。その後、冷蔵庫の隣にあったロッカーにお菓子はないかと探す。しかし、お菓子は見つけ出すことはできなかった。

 そして、蓮がお菓子はないと判断をしたとほとんど同時に薫がリビングに戻ってきた。

『ごめん~! 何見ようかなやんじゃってぇ~』

 薫は手に三つもCDディスクを持っていた。

「たくさんもってるね」

 蓮は軽くツッコミを入れる。

『えへへっ――どぉ~しよぉ~?』

「時間あるし全部見たら?」

『そうするぅ! レンっちも一緒にねぇ!』

「……え?」

『あたりまえだよぉ!』

「あ、はい。――あ、これ、ジュース。どっちがいい?」

 蓮は机に置いたジュースを手に持ち薫に見せる。

『ん~、こっちぃ!』

 薫はコケ・コーラを選びもうキャップを開けた。そして一口口にする。

『オイシィ~! レンっち気がきくぅ!』

「ありがとう」

『ならぁ~、みよぉ~!』

 そうして、二人はソファに座り映画を見始めた。

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