第3話感じる嫉妬…
蓮は長方形のリュックを前に持ち、電車に揺られ。立っている。
蓮の住んでいたアパートは栄駅の近くにある。そして、『遊戯専門学校』の寮は名古屋駅の近くにあるため駅にして二つ分の距離だ。そのため時間に余裕にあった蓮は、何も慌てることなくアパートを出た。出た瞬間は眩しい太陽の光が蓮の目に突き刺さったが今は慣れていたためもう平気だ。
時間は午前八時三十分。そしてその日、四月二日は平日。そういったことで通勤ラッシュだったため、天気と裏腹に蓮の心は曇っている。
妙に耳に残る電車の運転手の声。その声が名古屋駅目前を伝えると、蓮は降りる態勢に入った。
それは朝の満員電車の戦い――。
――プシュー
電車が止まった。多くの人が名古屋駅で降りる。蓮の後ろにいた人もそのようだったため、どんどん後ろから押される。
「――あ、」
押された勢いで声が漏れてしまった蓮。
しかし、押された勢いにより、あっさり電車から降りることができた。
(よかったー……)
蓮は少しほっとした。
蓮は電車を出たその流れに乗って、改札もでた。
名古屋駅は広い。蓮が率直に思った感想だ。蓮は駅内の地図が頭に入っているわけでもなかったため、少し迷子になる。……が、すぐに外に出ることができた。
名古屋駅の外。それは、ガラス張りのビルがたくさん並んでいた。それは誰もが想像するような都会の街並みだ。――しかし、蓮は驚いてはいなかった。なぜなら、蓮が住んでいた栄のアパート。そこもなかなかの都会だったからだ。
蓮はポケットからスマホを取り出し、マップを開く。『遊戯専門学校』の寮の位置を検索したのだ。
蓮はそのままスマホを片手に歩いて行った。途中、アニメの専門店があったが目もくれなかった。というより存在にすら気づけていないぐらいスマホの画面を見つめている。
だんだん蓮の心情は穏やかでなくなる。
迷子になってしまったのだ。
蓮はしっかりスマホのマップの指示通り進んでいた。しかし、蓮は左に曲がるところを無意識のまま右に曲がるなど、寮のあるところとは程遠かった。
この蓮の方向音痴度はあまりに激しかった。これが蓮をニートにさせた。と言っても過言ではないほどだった。
蓮は少しのどが渇く。そのため、蓮はスマホの画面を覗くことをやめ、周りを見渡した。
すると、少し行ったところに自動販売機があった。蓮は一服しようとそこまで行き、コケ・コーラという炭酸飲料を買った。蓮はペットボトルのキャップを開き、ジュースを一口飲む。その後、蓮はもう一度スマホに目をやる。そして、またも困り顔をゆがませた。
『すにませぇ~ン。なにかぁおこまりですかぁ?』
蓮は車の中に乗っている女の子に話しかけられた。その女の子茶色い瞳に茶色い髪。髪の長さは肩ぐらいまでで、白のワンピースを着ていた。要旨も人形のように整っており、声までもがかわいかった。
「――え……あ、はい……」
蓮は見とれて声が出なかった。しかし、その女の子はとても親切だった。
『どうされたんですかぁ?』
女の子は蓮のためにわざわざ車から降りてくれた。
「――え、えっと……ま、迷子になったみたいで……――」
蓮はかわいい子を前にして、コミュ症といわれるわけもわからない病気を発動させた。
『どこにいきたいのぉ?』
蓮に救いの手を差し伸べようとする少女。
「え、えっとー……ここです」
蓮は話すことがどうしてもできなかったため、スマホの画面を差し出した。
『えぇぇぇぇ?』
少女は目を点にした。
「な、なにか?……」
『ここ、ワタシもこれからいくところぉ!』
「――」
蓮も驚いた。その時声は出なかった。
『まあ、いいやぁ! この車で一緒に乗せて行ってあげるねぇ!』
「あ、ありがとう……ございます」
そして、蓮は女の子と一緒に車に乗った。
その車はリムジンではなかったが、乗った瞬間高級車だと実感することができた。
蓮が車に乗ると、
「目的地は寮のままでよろしいでしょうか?」
運転手の男性が声を発した。
『うん! いいよぉ!』
小さな女の子は無邪気な笑顔で返事をした。すると、
「かしこまりました」
運転手が低い声で返事をし、車が動き出した。
(いったいこの子は?……)
蓮は勇気を振り絞り、声を出そうとした。しかし、緊張で声が出なかった。そんな時、
『ワタシの名前は北花薫(きたはなかおる)! コンフロではルクリアって名前なんだけどぉ……さすがにわからないよねぇ――』
蓮は驚きを隠そうと一度深呼吸した。
『どぉ~したのぉ?』
さすがの薫もいきなりの深呼吸は不振がった。
「――えっとー、薫さん? 蒼城蓮です……」
蓮は驚きと動揺で少しこえのボリュウームが小さくなってしまった。
『どうかしたのぉ? レンくん? あれ? レン……』
どうやら薫も気づいたようだ。
『――って、もしかして、ソウレンくん?……』
「そ、そうです……」
『それならこれから一緒に暮らすことになるねぇ!』
蓮はまさか一つ屋根の下に暮らす女の子がここまでかわいいとは全く予想だにしていなかった。
「――そ、そうだね……」
『そんな、敬語じゃなくていいのにぃ~!』
薫は笑顔で余裕の表情だ。――しかし、本当に異性と暮らすことになるとは……といった感じの蓮だった。また、運転手の冷たい目線も直接確認したわけではないが蓮には感じることができた。
「――は、はい」
『あ、! そろそろ着くよぉ!』
蓮と薫はまだなじめないまま、車は寮へ着いた。
「到着しました。少々座ってお待ちください」
運転手は車を降り、蓮と薫が乗っていた後ろのドアを開けた。
「ありがとうございました」
『ありがとぉ~!』
蓮も薫も挨拶をし、車を降りた。
「いってらっしゃいませ」
運転手は会釈をしたままだった。
しかし、蓮には自分に向かっての冷たい何かを感じ取れたきがした。
こうして、蓮と薫はそろって寮の入り口に向かった。
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