第2話これから始まる寮生活…
蓮は『コンフロ』に夢中になり時間の存在を忘れていた。
蓮のゲーミングPCに合格のメールが届いたのは、四月一日午後十時。そして今は次の日の午前八時三十分。『コンフロ』のダウンロードに三十分かけたとしても、もう十時間はコンフロをしていたことになる。
その十時間、蓮は何も口にすることはなかった。しかし、八時になった今初めて飲み物を口にする。蓮は一度立ち上がり、ゲームをプレイしていた部屋から出る。そのままリビングへと向かった。
蓮は一人暮らしするには少し大きすぎるぐらいのアパートに住んでいた。そのため、蓮が冷蔵庫を開けても食材などは入っておらず、コーヒーと冷凍食品など簡易的に食べられるものしか入ってはいない。蓮はコーヒーを取り出し冷蔵庫を閉める。その場で缶コーヒーのキャップに手をかけ、開けた。そして、立ったまま一口飲んだ。蓮は飲みかけの缶コーヒーを持ったままゲーム部屋に戻った。
蓮はゲーミングPCの前に座る前に手に持っている缶コーヒーをゲーミングPCの隣に置く。その勢いでPCの隣に置いてあったスマートフォンを手に取る。電源をつけ時間の確認を行った。時間はデジタルで八時三十五分と記されていた。
蓮はスマホのパスワードを指紋認証で解除し、パズルゲームにログインした。蓮はそのゲームでは有名なトップランカーだが最近はログインゲーへと変わりつつあった。
蓮はログインだけ済ませると、椅子に座りまた『コンフロ』を始めた。
蓮はログインしてから『コンフロ』にあるダンジョンをやっていた。しかし、もう集合時間の九時に近かったため四十人ほどのプレイヤーがログインしていた。
蓮はメールに書いてあった"始まりの街の噴水"に向かう。
始まりの街は円形の広場のようになっており、たくさんの店やダンジョンへの入り口などがあった。そして、噴水はその中央にどっしりとある。水はまるで龍が天に昇っていく、そんな感じだった。
そんな中世のヨーロッパが現代風に進化しているような"始まりの街"に蒼蓮は一人でいたが――
蒼蓮にチャットが届いた。
『チャット失礼しますぅ! いま、ログインしたてのルクリアで~すぅ。いま、お暇ですかぁ?』
メールに書いてあった九時という集合時間まで残り十五分。蓮が早くに始まりの街に来た理由――それは、ほかのプレイヤーとの交流。つまり、蓮からチャットをする手間が省けたのだ。
「おはようございます。いま、暇ですよ」
蓮はルクリアという女のキャラクターを使っているプレイヤーにチャットを返した。
『わぁ~い! ありがとですぅ!』
ルクリアの返信はとても早かった。早いというのも本当に刹那に帰ってきたため、蓮はルクリアのキーのタッチの速さまで速いということが分かった。
蓮は冗談半分で返事を返す
「タイピング、すごくお速いんですね?」
『そんなことなぃよぉ?』
蓮は確信した。やはりルクリアはただ者ではないと……
「いや、早いですよw」
『またまたぁ~、褒め方じょうずですねぇ~』
「そんなことないですよ」
蓮は『遊戯専門学校』に主席で入学したことを隠したまま、下手に出て話を進めてたが――
『それにしても、遊戯専門学校(ここ)に主席なんてすごいですねぇ!』
蓮はPCの前でだれにも見られてはいないが、心の中が踊っていることを隠すようにポーカーフェイスを変えない。
「そうですか? 自分の兄もここに主席で入学したし、我が家ではふつーというか……」
『わぁ! 蒼蓮君のおにーちゃんもなんだぁ! すごいねぇ!』
「そうですか? それはありがとうございます。そんなことよりこのゲームのルールわかりますか?」
蓮はパートナーに誘おうとしたのだ。
『ハイッ! 『コンフロ』は《アルマゲドン》と同じ、"剣士"と"ガンナー"の二人がパートナーとなり次世代のトップゲーマーを育成するゲームアプリですよねぇ?』
「分かるなら話は早いです。自分とパーティーを組まないですか?」
『奇遇だねぇ! ワタシもそれを誘うために蒼蓮くんに声かけたよぉ!』
「そっか、ならよかった」
『だねぇ! あ、そろそろ九時だよぉ!』
ルクリアが時間に気が付いた。
そして、九時ちょうどになったとき、流れていたBGMが止まった。
「皆さん入学おめでとうございます――」
女性の声だった。
「あなたたち、生徒にはこれからパートナーを作ってもらいます。パートナーを作ることができたら、画面右上にあるメニューを開きパートナーの名前を入力してください。そして、パートナーとなった生徒と明日から『遊戯専門学校』の寮にて生活をしていただきます……」
蓮は驚愕する。それは兄から寮生活のことなど聞かされていなかったからだ。
「寮生活のことは明日詳しく説明しますが、今しなければならないことだけ説明します。まず、寮生活は異性と暮らす。普通です。今までに卒業していった生徒も異性で暮らしている人は多くいました。これはゲームだけでなく普段から息を合わせるというトレーニングの一環だと思っていてください。そして二つ目です。生活するにあたっての道具はすべて寮に揃っています。しかし、ゲーミングPCは各自持参していただきます。引っ越し会社が今日各ご自宅に行くのでその時に運んでもらってください。なお、配置などもあるかとおもうので写真を四囲から撮らせていただきます。その時、質問など聞かれたら答えてください。そして最後の三つ目、沖縄から入学してくる生徒はいませんでしたが、九州から北海道までの入学生がいます。しかし、明日全員が愛知にある寮まで来るように。以上です」
蓮の部屋のスピーカーはまた、BGMへと切り替わった。
蓮はルクリアに返事を返さず放送を聞いていたため、今返すことにした。
「ルクリアさん、自分男ですが……」
『ぜんぜんいいよぉ~!』
やはり、ルクリアの返事は早かった。そして、返信の内容も軽いノリのように感じたため少し驚いたが、
「そ、そうですか(笑)」
チャットを返した。
『なぁ~にぃ? 蒼蓮くんまさか動揺してるぅ~?(笑)』
ルクリアは蒼蓮を仰ぐようだった。
「してないですよ」
『そっかぁ~。なら、パートナーの登録だけしようかぁ! ワタシ今日用事あるからぁ!』
「そうですか。お疲れさまでした」
蒼蓮はメニューを開いた。
すると、"パートナーの名前を入力してください"と表記がでて、それに従った。
蒼蓮がもう一度メニューを開く。そこの一つには《パートナー》という欄があった。蓮はその欄をクリックした。すると、ルクリアが今ログインしていない情報が表示された。
蓮はコンフロでやることがなくなったため、ログアウトした。
蓮は残っているコーヒーを飲んだ。そして、中身を無くした缶はリビングに行き、中身を洗い、飲み口をしたにし、置いた。
その時、蓮は徹夜状態にあったため寝室にいく。
そして、蓮はコーヒーを飲んだことも忘れ、ゆっくりとベッドに横になった。
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