<Chapter 10/FD>


D「高速道路って普通信号機は無いんだけど、でもいくつか信号機がある場所があるんだよ。例えば九州自動車道の肥後トンネルとか、関越自動車道の関越トンネルとか。こういうトンネルの入り口に設置されてある信号機を、トンネル信号機って言うんだよ。名前そのままだよね」

F「…………」

D「それでそのトンネル信号機だけど、トンネルが長すぎる場合に設置されることが多いんだ。このトンネル信号機が出来た理由はね、東名高速道路の日本坂トンネルで起きた火災事故にあるんだ。トンネルの中で事故が起こっちゃって、でもトンネルって暗いから先が見通せないよね。それで事故が起こってることが見えずに現場に突っ込んじゃうクルマがいっぱい出てきて、大参事になっちゃったんだよ。だからそんな事故を未然に防ごうって言うことで、注意喚起のために信号を設置したんだよね」

F「…………」

D「それともう一つだけ、高速道路に信号機がある例があるんだよ。ここから割と近いところに、美女木ジャンクションってところがあるんだけどね。そこは何とビックリすることに、高速道路同士が平面交差していて普通の交差点みたいになってるんだよ」

F「……ふふっ」

 F、この時になって初めてDの方を向き視線を交わす。

D「ようやく笑ってくれたね、今回は早い方だったかな?」

F「ごめんなさいね、私いっつもこんな感じで……興味の湧く話が、なかなかなくって。それに、変なところでしか笑わないから……」

D「構わないよ、僕は話の持ちネタがいっぱいあるし」

F「ありがとう、優しいアナタはとっても素敵よ……今まで周りの人たちの話はつまらないモノばかりだったけど、アナタの話だけは違った。楽しい話をいっぱい知ってるアナタは、私の世界を広げてくれた」

D「数撃ちゃ当たる、ってことでしょ」

F「ううん、アナタが素敵だからよ。少なくとも、私にはそう見える」

D「……そんな言葉をかけてくれるのも、君だけだよ。今まで僕は、根暗なオタクだって嫌われてきたから」

F「自信を持って。確かに多くの人は、アナタのことを嫌がるかも知れない……でも、私は違う。私だけを見て」

D「君は……君だけは、僕を受け入れてくれる」

F「周りのことなんて、気にしなくていいの。アナタは周りから嫌われていて、私は周りに興味を持てない。だったら私たち二人だけで、二人だけの世界を作りましょう?」

D「アダムとイヴみたいだね。世界には、僕たちだけだ」

F「恋人同士だったら、誰もがそうなのよ。周囲のどんな影響よりも、パートナーの方が大切。そうでしょう?」

D「その通りだね……だからこそ、僕は君が好きなんだ」

F「さぁ、話の続きをお願いできない? 私、さっきの話に興味あるな」

D「うん、いいよ。それで、美女木ジャンクションが平面交差になった理由だけどね。ジャンクションの周りには住宅街があって、まとまった土地を取得するのが難しかったんだ。だから省スペースで済むようにって、ジャンクションにしては珍しい平面交差が――」

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