ケイside
第26話 夢の世界
桐子さんの口の中を攻めながら、僕は甘い息を吐いて彼女を夢の中に誘った。
そして、僕自身もその夢の中へダイブする。
彼女が見ていた夢は、数年前の記憶だった。
田舎にある森の奥に木で組み上げられた小屋があり、その中に彼女ともう一人、男の子がいる。どうやら彼女の過去に実際にあった光景の記憶らしい。
え?
そういうことだったのか……
夢の先の展開をチェックした僕は、知ってしまった。
桐子さんが男性に恐怖を感じるきっかけとなり、彼女を精神的に拘束する原因となった事件の記憶が、彼女自身の脳内にあることに気づいたのだ。
とある事件。そう、桐子さんが精神的に錯乱し、近くに転がっていた石で男の子を殴りつけ、殺害してしまった「とある事件」は、この彼女の夢の中で今からそのまま再現される予定なのだ。
そこで僕は、この夢の中の「男の子」に成り代わり、彼女をリードすることにした。
夢の予定を変更するよう、彼女の不安を爆発させないよう、僕はじっくりとキスを交わし、彼女の気持ちを高める。
そして僕は、自らが仰向けとなり、下から桐子さんを抱きかかえた。元々勝気な桐子さんは、その僕の両腕の戒めを解くと、自らの腕で上から押さえつけ、僕の首筋に舌を伸ばす。
――ここで彼女の身に潜む野獣を表に出し、上手く導くことで、コンプレックスから解放することができれば、現時点で彼女が抱えている負担を軽減することができるかもしれない――
そう思った僕は、彼女にされるがままになった。
若い桐子さんは僕が抵抗しないことを知ると、手を僕の胸にあて、シャツのボタンを外していく。そして、上半身をはだけさせると、僕の胸に舌を
――レロレロレロレロ
僕が耐える表情で応えると、彼女は今度は僕のズボンのボタンを開け、チャックを開き、中身を取り出した
夢の中でリードするはずであった僕が、現在は完全にリードされている。おそらく今の彼女の中身は、当時の少女ではなく、現時点での桐子さんなのだろう。
そう思った僕はゆっくりと彼女をコントロールし、徐々に自分のペースに持っていく。そしてゆっくりと体を入れ替えた僕は、彼女の足に舌を這わせつつ、さがっていく。白い足首から足の甲、指の先までねっとりとしゃぶりまわす。
――あっ
彼女が声にならない声をあげゆがめた顔をそむける。ひざ裏にはじわっと汗をかいているようだ。僕はゆっくりと彼女の足先の神経をほぐし、世俗の垢を舐めとりながら、けいれんする体を再びさかのぼる。そして彼女の身体に溜まっている煩悩のすべてを一点に集結させた。
そして僕は、自らを硬くすると、彼女に飛び込む。
彼女の体は一瞬強張ったが、それでも徐々に緩んでいくと、僕を受け入れてくれた。
僕は彼女の記憶を新しいものに書き換えつつ、彼女の急所を攻めていく。しばらくすると、僕が動かなくても彼女自身が動くようになった。
その結果、僕は
そして、夢から脱出した僕は
夢精していた。
だが、本当に命がけだった。
あの夢の続きを事前に知っておかなければ、大変なことになっていたかもしれない。
もちろん、元々の結果を阻止したところで、本当に彼女の負担を軽くできたのかどうか、実は僕にもわからないのだ。
そもそも「あの事件」が実際に起きたことなのかどうかさえも、確かめるすべはない。何らかの事情のせいで彼女が記憶に残る同じ夢を見ることになってしまった、というだけなのかもしれない。
でも、これで彼女が自らの精神の呪縛から解き放たれるのであれば――そう思った僕は自分の本能に賭けたのだ。
傍の彼女の寝顔を見る。幸せそうな笑顔だった。
僕も今の自分にできる精いっぱいのことをしたつもりだ。
ただ、それでも僕の心にはひっかかることがあった。
「あの事件」のすじがきでは、最後、桐子さんが男の子が息をしていないことを確かめ、あたりを見回したとき、小屋の入り口から一部始終を見ていた者がいたのだ。
今思えば、それは確かに、
香織ちゃんだった。
僕がそれを思い出した瞬間、目の前の彼女の幸せそうな寝顔が一変して曇る。
しまった!
夢の中身を書き換えた後も、僕は最後のそこだけは手を加えていなかったのだ……
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