真乃実side

第24話 古代人の追憶

 ここまで順調に来ていた。


 通信の負荷コントロールも安定し、細かいエラーもほぼ、つぶした。


 ネットワークをデジタルに切り替えるテストも、情報の取捨選択を行うソフトの開発も完了した。少しずつあたしの脳の負荷を減らしつつ、新しいシステムを起動し、慣らしていく。



 そして、心に余裕ができたあたしは、遠い記憶を思い起こした……




「カオリン……あたしたち、このままでいられるかなぁ……」


「いられるよ~。私、ずっとマノミンと一緒にいる~」


 ベッドの中で、カオリンはいつも、あたしに優しくしてくれた。


 そして、あたしの理想の話を聞き、うなずいてくれた。



 そう。いつか、男のいない世界に二人で旅立つ……



 本当のことを言えば、あたしにはカオリンだけいれば良かった。


 男が嫌いなのは事実。触られるのも嫌い。それを想像するだけで、叫びたくなる。だけど、カオリンを失わないことの方があたしには重要だった。


 あたしが男を嫌いになったのは、あたしからカオリンを奪おうとするから……



 そして



 あたしをいじめるから……






 異次元に向かう話を突きつけ、あたしとカオリンを無理やり引き離そうとしたあいつらを、あたしは許せなかった。


 寿命がないに等しい古代人にとって、子孫を授かることの重要性など、限りなく0であるにもかかわらず、あたしやカオリンのような存在を蔑視するあいつらを、あたしは逆にさげすんだ。



 そして




 あたしの予測した通り、男たちは戦争を引き起こし、多くの古代人が、死んだ。




 それでも彼らは争うことをやめなかった。




 女子供を犠牲にしても、延々と戦争を続けた。


 異次元でも戦いが起きた。


 あたしやカオリンが望まない方向にすべてが向かった。



 そして、最悪の命令が下った。



 あいつらは、あたしやカオリンに「子供を産め」と命じたのだ。


 長い戦いを続けるために、だ。





 本末転倒にもほどがある。






 あたしの方針は、定まった。



 カオリンと離れ離れになる前に、あたしたちは二人で伝承法を使ったのだ。


 古代人には必要ないはずの、伝承法。



 何も知らない現代人からしてみれば、あたしたちの行為は自殺と呼ぶべきかもしれない。



 でもそれは違う。


 魂さえあれば、生まれ変わり、きっと巡り合うことができる。



 たとえ、千年単位の時間がかかったとしても、この世でつらい思いに耐えるよりはマシだ。



 しかし、あたしが生まれ変わったとき、カオリンはまだ目を覚ましていなかった。


 争いは違った形で続いていた。現代人の手によって戦争が続いていたのだ。


 あたしは、争いをやめる手段を一人の現代人の男に託し、再び伝承法を使った。




 再び目覚めた時、カオリンの魂が近くまで来ていることに気がついた。


 あたしは様々な条件を調べ、即座に準備にかかった。


 カオリンを出迎える準備に。


 あたしたちの理想を実現する準備に。






 そして、それがもうすぐ、手に入る。



 あたしたちは今、理想郷ユートピアの目の前まで来ているのだ。

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