第23話 ピンポイントアタック!

 ドアから入って来て、その場に崩れ落ちた桐子さんの姿を目の当たりにした僕は、後悔した。



 確かに僕は香織ちゃんに、はめられたのかもしれない。


 しかし、自分に隙があったことは間違いのない事実。


 力を手に入れようと塔に挑んだ結果が、このザマだ。



 その場でへたり込んだ桐子さんを香織ちゃんは抱き起し、ベッドにいざなう。


 そして、その場で桐子さんを優しく包み込んだ。




 ところが、だ




 僕はその後の展開に唖然となった。






 桐子さんが、香織ちゃんに襲い掛かったのだ。






 ゆっくりと、しかし確実に






 桐子さんは、香織ちゃんの弱点を的確に突いていく






 香織ちゃんは自責の念を抱いているからか、まったく抵抗できないでいた






 『…………』






 カケルも言葉を失い、ことの成り行きを見守っていた。


 こんな状況を目の当たりにして、何かできる男がはたしているだろうか?


 まるで野獣が人に襲い掛かり、襲われた人が野獣に変わっていくような、そんなホラー映画のような一幕がリアルに繰り広げられているのだ。


 モラルとアンモラルの境界線で僕たちの心は揺れ動くが、しかしそれでも指をくわえて見守るしかなかった。



 目の前で繰り広げられる二人の動きは次第に熱を帯びていき、香織ちゃんは音には聞こえない悲鳴をあげた。






(助けて……)



 その言葉を感じ取った僕とカケルは、我に返ると、目の前にある丘を登った。


『兄貴、俺が前をつく。兄貴は背後を頼む!』

『わかった!』



 自分の中に、確証はなかった。


 これまでに成功体験がなく、直近で二回も失敗していた僕には、自信はなかった。


 しかし、迷いはなかった。


 先ほど目に焼き付けた光景は、心なしか僕の全身を硬くしていた。


 だから、これが最後のチャンスだと思った。



 カケルが術式を詠唱する。


『スペルマティックピドルエレクチオーン!』


 僕の目からもカケルの体が硬化し、研ぎ澄まされてていくのがわかった。



 負けてはいられない


『エレクチオーン!』


 僕は再び、狭い洞窟の中へと入り込んだ。



 先に潜入した洞窟よりも狭く、険しい道を、僕は懸命に掘り進む。

 そして、ほのかに光る箇所を見つけた。


 僕は大きく深呼吸する。


 カケルの声に耳を傾けるため。


 そう、今回はカケルとの共同作業なのだ。


 タイミングを合わせて発動させなければならない。失敗は許されない。



 壁に耳を当て、ゆっくりとカケルの様子をうかがう。


 徐々に壁の鼓動が激しくなっていき、地下水が流れる音がこちらにも聞こえてきた。



『兄貴、今だ!』


『よし!』


『『イグニッション・エクレティオン・ガルム・ヘイド!!』』



 僕はほのかに光る箇所に力を込めた




 ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!



 地鳴りとともにあたりが幸福の光に包まれる


『よし!』

『やったぜ!』



 僕とカケルは達成感に包まれながら、その場で気を失った。

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