桐子side

第22話 心が壊れた瞬間

 私は、悪夢を見た。


 すべてが奪われる夢だった。


 目が覚めた時、シーツは汗でぐっしょりと濡れていた。



 肩で息をしながら、今までのそれが夢であったことを確かめると、私はほっとして息を整えようとする。






 ところが、周りを見回しても、私の隣で寝ているはずのケイさんがいなかった。






 暗がりの中、心臓の鼓動が速くなった。






 居ても立っても居られなくなった私は、女王の部屋へ向かった。






 コンコン


「どうぞ」


「失礼します」






 ドアを開けて入ったとき、そこで目にしたのは、ベッドで微笑む女王と、その隣に横たわるケイさん……






「あ………………あ………………あ………………あ…………あ…………」






 私は、これまで信じてきたものすべてが信じられなくなった。






 その場でへたり込む私を、女王はベッドにいざなう。


 そして、水を一杯持ってくると、私に飲ませてくれた。



「少しは落ち着いたかしら?」


「…………」



 女王は私の震える体を抱き寄せると、そのまま布団の中に引き入れた。


 そして、優しく私の髪を撫でる。



 私の顔は、女王の胸にうずまった。


 女王はじっと、私を抱きしめる。







 しばらくして、脳が空っぽになり、体の震えがおさまった。


 そして、私はなにげなく、女王の胸にキスを落とした。




 あっ……






 女王のそのかわいい呻き声は、私の精神を錯乱させた。


 私は女王にゆっくりと馬乗りになると、両腕をとり、首筋をむさぼる。



 彼女の甘い吐息が耳の周りに漏れると、もう止まらなくなった。





 

 すべてを信じられなくなり、すべてを失った私は本性をさらけ出した。


 




 女王の小さな身体の至る所に口をつける。


 彼女の感じるところは手に取るようにわかった。


 ここか? ここだな?


 女王の吐息が荒くなるにつれ、私の本性はこの小さな体を自分のものにしたい、と本気で思うようになった。


 この夜、いや、この瞬間だけでもいい、目の前の絶対者を私の手で吸い尽くしたいと思ったのだ。


 止める者も理由も何もなかった。


 本能むきだしだった。


 女王の目の光が私を狂わせた。



 わたしは彼女の柔らかい体をこれでもかと揉みしだき、ベッドの上で体勢を変えて後ろから抱きかかえると、すべすべの背中を堪能しながら首筋を甘噛みする。彼女のあごが上がり、背中が反り返った。



 その時だった。私の太腿にケイさんとカケルさんがよじ登って来たのは。



 女王の足に自分の足を絡めていた私の急所は、完全に開いていた。






 アッ――――――――ッ!






 そこから形勢が逆転した。






 私は女王に上半身を舐めまわされ、カケルさんとケイさんに局部を二手に分かれて責められ、地獄を味わった。



 声を出すことすらできなかった。


 私は歯を食いしばりながら耐えたが、その自分の中の力が私の意識を昇天させる動力となり、私の全身は数秒硬直したあと、長きにわたるエクスタシーが始まった。


 その間も女王の舌と二本の凶器は執拗に、的確に私の急所をとらえ続けた。


 そして、それらすべてがつながった。


 女王は自らの中にもその凶器をしまい込むと、私の下半身にまたがった。



 夜が白むまで、彼女は私を許さなかった。





 その晩、私は悪魔に魂を売ったのだ。




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