桐子side

第15話 テスト

 朝教室につくと、ケイさんが私の頭の中に語りかけてきた。


(あれ? どうしたの?)


『今、隆一さんたちが、ネットワークのテストを行ってるんです』

(ネットワーク?)


『ウミウシ属、イソギンチャク属で情報を共有するネットワークです』

(それって、こんな感じで頭に情報が入って来るの?)


『そうです。そして、逆にこちらの体験も自動的にネットワークに流れます』

(あら嫌だ、私、下品なことできないわね)


『大丈夫ですよ。個人情報は基本的に流れませんから』

(だといいけど、そんな情報、処理しきれるのかな?)


『ここ数日の情報は、追っておかないとまずいことになります』

(どういうこと?)


『このクラスの女子が全て、ウミウシ属と付き合ってるってことは……』

(ひょっとして、今後、男子は必要ないってこと?)


『そうなる可能性が高いですね。すでに沿岸部を中心に我々とイソギンチャク属は全世界に広がりましたから』

(ということは、その後、どうなるの?)


『一両日中に争いが発生すると思います』

(あれ? じゃあ、波夫はどうなんの?)


『桐子さんは、どうしたいですか?』

(そうね……あんなやつだけど、いきなりいなくなられるのは困るかな……)


『じゃあ、帰って香織ちゃんと相談しますか?』

(そ、そうね。ケイさんも立ち会ってくれる?)


『もちろんいいですよ』





 買い物を終えて自宅に戻ると、波夫はまだ帰ってきていなかった。


「あ、おねえちゃん、おかえり~」


 私は覚悟を決めて、香織と向かい合った。




「え~やだよ~。だって、おにいちゃんいなくなっちゃったら、しばる相手いなくなっちゃうじゃん~」


 ああ、そうね、そうだったわね、あなたにとっては。


『最初に誤解の無いように言っておきますが、僕たちが人間の男たちと直接戦う、ということではないんです。これは自然発生的なヒトの女性vs男性なんです』


 ケイさんが落ち着いて今後の展開を説明する。


「だけどさー、こういう時の女って究極に個人主義で連帯感ないし、グループで戦うとか、普通に考えて無理じゃない?」


 私はいまいち想像できなかった。

 だって、男と戦って肉体的に勝てるとは思えないんだよね。


 いかんいかん、血相変えて暴れ回る、大勢の内藤剛志を想像してしまった……


『個人的な戦いで言えば、今回に限っては男性より女性の方が有利に展開すると思う。事前情報があるのは女性だけだし、それに女性は、こういったケースで相手を仕留めることにためらいがないはずだから』


 カケルさんがテレパシーを挟んだ。


『そして、女性軍には絶対的なカリスマオペレーターがいますからね』


「「カリスマオペレーター?」」


『はい。的確に情報を処理し、指示を出す存在が女性軍には、います』


 ケイさんは深いところを知っているようだ。さっき通信テストを行っていた人のことかな?


「じゃあ、私たちはその人の元で戦わされるってこと?」


『たぶん桐子さんや香織ちゃんが戦う必要はありませんよ。波夫さんを倒す意志はないんですよね?』


「え? ということは、敵は一般的に身内ってことなの?」


『そういうことですね。そして現在、ほとんどの世帯において立場的に女性の側が優位ですし、食料確保の面でも女性が男性に負ける理屈はないです』


「つまり、女が先手を打って身内の男たちを各個撃破する、ってこと?」


 香織がケイさんに聞いた。


『そう。独身男性、それも食料を買い込んだ引き籠りは最後まで生き残るかもしれませんが、それにだって限界があります』


「え? じゃあそのヒッキーの人たち、どうなんの?」


『香織ちゃん、知りたい?』


「う、うん……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る