ケイside

第14話 対フグタ戦

『すまんな二人とも、急に呼び出して』


 隆一さんが我々を出迎えながら言った。


『いえいえ~隆一さんたちにはいつもお世話になっていますから』

 カケルが調子のいい返事をかえす。


『ひょっとして……隆三さんのことでしょうか?』

 僕が議題について、想定していることを聞いた。


『ああ。実は今日、隆三が倒された』


『えっ?』

 学校の違うカケルは、知らなかったようだ。


『……ということは、相手はモンスター、ですか?』

 僕が最も気になることを聞いてみた。


『いや、青木という現代人だった。特別に悪意があったわけではなかったようなので、彼に対する処置は適度な報復にとどめている』


『…………』

『我々兄弟、何か隆一さんのお役に立てること、あるっすかね?』


 僕は何も言わなかったが、再びカケルが調子の良いことを言った。


『実は……話は変わるが、フグタはやはり、モンスターだった』


『『…………』』


 それは……つまり……


『我々はフグタを殺らねばならない!』


 覚悟を決めた目で隆一さんが言った。



 元々、我々七海雄はモンスターに立ち向かう有志であった。


 だからモンスターを倒す、というミッションを成し遂げることは本懐ではある。



 ただ、長らく戦うことがなかった我々は、どのように自らの能力を発揮すればよいのか、あまりわかっていなかった。


 正直、気弱になっていた。自分たちが強いことに疑いはなかったが、それでも慎重になっていた。隆三さんの死がそれに拍車をかけていた。もちろん死んだところで復活することはできるのだが、そのためには千年間は眠り続けなければならないのだ。


 だから現時点の七海雄で戦力になるのは、はっきり言って、隆二さんだけだろう。



『ケイくん、確か君は「無毛剣」の使い手だったよな?』


『はい、そうです。ただ、フグタはすでに毛髪が根絶していたような気がします。そういった不毛者アンデッド相手には「無毛剣」は通用しないため、自信が持てません』


『…………』


 正直に答えたが、重苦しい沈黙が流れた。


『カケルくんのスクリュードライバーはどうだ?』


『残念ですが、俺のあれは変態相手には逆効果かと……』



『…………』


 さらに重苦しい沈黙が周囲を包んだ。



『やはり、私が行くしかあるまいな』


『いや、だが隆一さん……』

『敵の情報をもう少し調べてからでも良いのでは?』


 そう言った僕たちに、隆一さんは笑顔で答えた。


『すでに同胞がたくさん押し寄せてきている。彼らを危険にさらすわけにはいかない。それに、この情報をもたらしてくれたのも、彼らなんだ』


『じ、じゃあ、それなら隆二さんは?』

『確かに隆二さんなら「落毛破」で……』


『いや、隆二の技も不毛系モンスターには通用しない。それに隆二には今、オウガを任せている。これ以上あいつに頼ることはできない』


 言い終わると隆一さんが立ち上がった。


 しかしその時


『ん?』

『……どうしました?』


 隆一さんに同胞から連絡が入ったようだ。


『フグタが……死んだ……』

『『え?』』


 何が起きたのか、わからない。


『しかし、なぜ?』

『ひょっとして、隆二さん?』


 僕たちの質問に、隆一さんはしわい顔で言った。


『どうやら……腹上死のようだ』


『『…………』』



 三人が顔を見合わせると、ニヤリと笑った。



『戦わずして勝ーつ!』

『『ミッション コンプリーーート!』』

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