真乃実side
第13話 ネットワーク
『オウガは今日、獲物を狙うようです。』
隆三さんからあたしに報告が入った。
(磯野家はどうかしら?)
『波夫はやはり塔らしきものを茂みの中に所持しているようです』
(桐子さんは?)
『桐子さんは女になりました』
(香織ちゃんは?)
『香織さんは切れ痔になったようです』
(わかりました、引き続き調査を続行してください)
『御意』
あたしには世界から様々な情報が集まってくる。
それを取捨選択し、ネットワークに流さなければならない。
もし少しでも間違えば、この世は一瞬で地獄と化すだろう。
昨日、イソギンチャク属とウミウシ属の第二弾が世界の陸地に大量に押し寄せてきた。
すべては彼らにとって、予定どおりだったのだろう。
だが彼らは自分たちのネットワークの構築力を甘く見積もっている、そう思った。
少なくとも、七海雄(実際は六名だが)の段階で情報網の構築が破たんしていた。
彼らは自分たちの所有するネットワーク機能を活用せず、自らの力量のみに頼り、単独行動を取っている。
昔と変わっていない……
そう思った。
幸いなことに、あたしの元に隆一くん、隆二さん、隆三くんがきた。
彼らはウミウシ属よりも話がわかる。
だから、あたしは彼らに手を貸した。
あたしは隆一くんと一心同体となり、来るべき日に備え、ネットワークテストを繰り返した。そしてそれをウミウシ属にも広げる計画だった。
最初は一方向、その後、双方向に切り替え、最後にすべての情報を瞬時に共有できるようにする。そのつもりだった。
ただ、やはり問題があった。
彼らは、情報の取捨選択ができなかった。
どの情報が必要なのか、判断することができなかったのだ。
乙女の切れ痔など、どうでもよろしいわ。
そのため、あたしが全ての情報を一時的に吸い上げ、必要な情報の抽出を行ってから、全体に展開することに決めた。
若干のタイムラグや記憶の不確かさをできるだけ考慮し、テストを繰り返す。
あたしの異能力も分刻みで向上していった。
そして現在
ネットワークの構築は、着々と進んでいる。
かに見えた。
隆三さんが、命を落とすまでは。
まさか、七海雄を倒す現代人がいるとは思わなかったのだ。
青木くんは、モンスターなのだろうか?
いや、違う。
実際、彼のその後の態度は、明らかにモンスターのものではなかった。
起きてしまったことは仕方がない。ただ、計画は大幅に遅れることは止むをえないだろう。
隆一くんや隆二さんは仕事と割り切って業務に集中してくれている。
あと一日か二日でネットワークを完成させなければ、イソギンチャク属とウミウシ属の大量死が待っている。そうなれば、この星の母なる海は、死滅してしまうのだ。
目を閉じて、気合を入れた。
がんばれ、あたし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます