桐子side

第8話 まのみんとの会話

 今日は掃除当番なので、帰りが遅くなってしまった。

 夕飯の買い物どうすっかなー?


「桐ちゃん! 元気?」


 後ろから幼馴染に声をかけられた。


「あれ? まのみんじゃん、なんか久しぶりだねー」


 まのみんは私と波夫の幼馴染で、すごくいい子。うちの波夫はボンクラだけど、まのみんがもらってくれたらいいな、と常日頃思ってる。そしたら美人三姉妹って言われちゃうかもね、だってまのみんカワイイんだもん。私がレベル下げちゃうけど。


「久しぶりに一緒に帰ろっかー って、あれ? 桐ちゃんの彼氏さん?」


「あ、そうなの、紹介するね! ケイさんです。ケイさん、こちらはうちのご近所さんで私と波夫の幼馴染のかくれ真乃実まのみちゃん」


『初めまして! 伊豆田ケイと申します』


「初めましてー。まのみんです。あたしいつも桐ちゃんにお世話になってます。桐ちゃんいい子なんで良くしてあげてくださいね!」


 まのみんにそう言われたケイさんは、少し恐縮しているように見えた。



「ごめん、まのみん、実は今日遅くなっちゃったから、買い物して帰らなくちゃなんないの。また今度話そうよ」


「わかった! じゃあ、またね!」


 そう言ってまのみんは帰って行った。





「ん? 今日の料理、全体的にしょっぱくね?」


 私の作った晩飯を食べながら、変態が思ったことを口にした。


「えーそうかなぁ? いつもと何も変えてないけどなぁ……」


 どうやら変態は納得したようだ。


「ところで桐子、ケイさんって普段、何食べてるの?」

「あー、そう言えばなんだろな?」


 これはごまかすしかない。ウミウシだから海藻食べますなんて、間違っても言わせちゃダメだ。ましてや今の自分がツンツルテンだなんて絶対ダメ……


『愛情です。桐子さんの』


 ケイさんがテレパシーを挟んでフォローしてくれた。


「え、そうなの? 仙人みたいだな」


『…………』


 たぶんケイさんは『仙人』が何のことなのかをわかっていないぞ。

ひょっとして愛情一本チオビタドリンクからの連想で、センニンが飲むから『聖水』って、私の? えーっ??



「そ、そう言えばカケルさんは趣味とかありますか……ね?」


 気まずくなった変態チワワが話をすり替えようとする。


『Youtubeですね』


「え? ユーチューバーですか? ひょっとして踊ったりするんですか?」


『…………』



 お前一人で裸踊りでもしてろ! この剛毛チワワめ!

 よく見たら下品な内藤剛志みたいな顔しやがって!



「そういえばお兄ちゃん、まのみんにも彼氏できたんだって?」


「え? マジ? あんた、まのみんを他の男に取られちゃったの?」


「ああ……相手は海野隆一さんっていう超イケメンだ」

『『え?』』


 あれ? 今ケイさんとカケルさん、反応した?


『ひょっとしてあれは隆一さんだったのか?』

『僕も昨晩は悪乗りしてしまった気はしていましたが……』


 ん?


「すみません、カケルさん、ケイさん、何のことですか?」


 剛毛チワワが何か言っている。


『『あ、いえいえ、なんでもありません』』


「そういえば今日、隆一さんの弟さんの隆二さんと話してきたんだ。俺と同じクラスの磯貝さんの彼氏さん」


「ああ、京子ちゃん? あの子もかわいいよねー」


 そう言いながら京子ちゃんの彼氏さんのことを思い出し、ケイさんの言ってた隆二さんを思い出した。チワワのくせにあのイケメンとお近づきになっているとは!


「そう。でな、『隆一さんが俺にいたずら仕掛けたみたい』って言ったら、僕の方から言っておきますので大丈夫ですよって言われた。何のことかはわかんないけどねー」


『『え? そうなんですか?』』


「うん、そうみたい。なんのことかはわかんないけどー」

『『……』』


 あれ? その隆一さんがまのみんの彼氏さんで、ケイさんやカケルさんと面識がある、ってことは、どんな相姦関係なんだ? って字が違う、毒されすぎ!


 少なくともこのだらしない剛毛のせいで、まのみんは京子ちゃんのお姉さんになっちゃうってことかしら? それはそれで面白いけれど、本当に役に立たない弟ね! 今晩おねしょでもして恥をさらすがいいわ!

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