第4話 香織の妄想
「おねえちゃん、ちょっと話があるの~」
お風呂から上がったとき、急に香織に声をかけられた。
「おねえちゃん、ケイさんとどこまで進んでるの~?」
わが妹ながらツッコミどころが的確過ぎてうろたえるしかないわ。
香織は昔から神の子だった。
誰からも愛される美貌とキャラクター、その上優秀な頭脳とセンスを兼ね備え、姉である私も鼻が高い。
そんな香織が今ハマっているのが某動画サイトである。ここ数年で彼女のサブカルインテリジェンスを飛躍的に向上させ、磯野家の財政を安定化させたのもすべてこの某動画サイトのおかげである。私のおこづかいは増えないが。
つまり世間一般にはあまり知られていないが、磯野香織は天才ユーチューバーなのだ。いまさら青少年はうんたらかんたらなどと能書きを垂れなくても、私なんかより全然先を行く、先行者なのである(中華キャノンのあれではないよ。念のため)。
そんな我が妹、香織から「どこまで進んでるの~?」と言われ、隠し通せるほど私は嘘が得意ではない。
「食べられちゃいました」
素直に暴露した。
「は?」
香織の目が点になる。
どうしよう、さすがに主語を抜くのはやばかったか……
「……私も、カケルさんに食べてもらえるかなぁ?」
香織はとろんとした目でそう言った。
「あんたまさか、それ、動画のネタにしようとか、思ってないよね?」
「うーん、どうしようかなぁ~」
ちなみにここ、磯野家の所在地は長野県ではないし、そうでなくても児童買春・児童ポルノ禁止法に違反しそうな行為は自らやっちゃダメだろ! と清廉潔白な私が言ってみる。
「ところで、気持ちよかったの~?」
さっきまで別世界にいた香織にギンギンな目で直球を投げつけられた。
ダメよあんた、カケルさんに体全身をテロテロと這いずり回られたあげく、大事なところにぴったりと張り付かれてぴくぴくアッハーン的な妄想とかしてるんじゃないでしょーね? なに? まさか貝合わせだと? くっ、そんなっ! 複数体で迫られるとはっ! って、え? 私も?
「おねえちゃん、なに変なこと考えてんの~? たかが脱毛でしょ~?」
香織に哀れむようなジト目で見られた。死にたい……
「だってカケルさんってイケメンだし、絶対人気出ると思うんだ! といっても、自分の彼をネットにさらすのはさすがに気が引けるんだけどね~」
本気でそこで悩んでるのか?
「だから、カケルさんじゃなくて、ケイさんにお願いするのはどうかな~?」
って、なんでそーなる! 自分の彼じゃなかったらいいのか!
「だって、撮影して編集するの私だし~。被写体になれないもん」
「ちょっと待って香織、ひょっとして私も? 私のはすでに食べられちゃってるから、しばらく撮影できないわよ。というか、新しく生えてきてもお断りだけどっ」
「そっか~、じゃあ自分で自分の撮るしかないか~」
は?
「タイトルは考えたの。『14歳、可憐な少女のワカメを食べるイケメンウミウシカケルさん』」
「そのままじゃない! それにどう考えてもアウトでしょそれ、本人の名前出ちゃってるし」
「じゃあ『美人姉妹とイケメンウミウシの相姦関係』はどうなの? 許されるの?」
「あんた、あれ真に受けてんの? そんなことするわけないじゃない。誰得よ?」
「おねえちゃんだったらそう考えたかな、と思って~」
考えませんよー
「じゃあ、他に何か考えてよ~おねえちゃん」
「なぜ私が?」
「もしおねえちゃんが一緒にヒット作考えてくれたら、私の権限でおねえちゃんのおこづかいを今の倍にしてあげてもいいよ~」
「え? マジですか? やったー!!」
こうして我々姉妹の考案するストーリーは「人類は滅亡する!!」に近づいていくことになった。
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