第13話 お風呂

「ただいまー」

「お帰りなさい。お風呂湧いてるわよ」


 おっと、そうだった。今日はお風呂に入れるんだった。

 ご飯の前に入っちゃおーっと。


『僕も一緒に入ろうかな?』

「あーそうする? って、ええーっ!」


 いきなりの急展開じゃない? これ! って今まで散々あれやこれやしてきたくせになに言ってんだお前! って思われるかもしれないけど、さすがに明るいところで異性にすっぽんぽんを見られるのは恥ずかしいわけよ、スタイルに自信あるわけじゃないし……





 というわけで二人でお風呂だやっほーっ!


 隆二くんもしばらく入っていないんだからしっかり洗わないとねー、しょうがないよねー。


 おっと、風呂場にお母さんが塩を用意してくれてた。これを入れたら隆二くんも快適ってわけね。


 

「隆二くん、湯加減はどう?」

『ありがとう。ちょうどいいよ』


「ところで、今日言ってた、よみがえるとかなんとかって話なんだけど、隆二くんや隆一さんの寿命ってどれくらいなの?」


『実は長いよ。我々は、君たちよりもずっと長生きなんだ』


「え? そうなの?」


『うん。だけど肉体はいつか朽ち果てる。その時には「同化の法」を使って、新しい肉体を得るんだ』


「そんなことって、できるの?」

『「同化の法」が使えれば、ね』


「じゃあ無敵じゃん」

『実は、言いにくいんだけど、僕、それの記憶がないんだよ』


「え?」

『一部記憶を消されてこちらに来ているから』


「そうだったんだ……でも、なぜ?」

『それはわからない。僕たちを選んでこの世界に飛ばした者たちがやったことだから』


「隆一さんも、そうなの?」

『うん。隆一も隆三もそう』


「不安じゃない?」

『大丈夫だよ。こうして京子がいてくれるから』


「だけどそんなに長生きするんだったら、私がおばさんになったら、私の事、捨てるんじゃない?」


『そんなことはしないよ~ のんびりとした幸せな家庭を築くのが僕の夢だから』


「あらあら、やることはいちいちエグいのに、そんなことを言うの」

『だって本当のことだもん』


「じゃあさ、本気で私と結婚してくれること考えてくれるの?」


『もちろん。ただ、まだ少しやり残した仕事があるんだ。それが終わったら、僕の方からプロポーズさせてください』


「あ、ありがとう……」

『いえいえ。そろそろ上がろうか』


「そうね……」



***



 そう、あの時オウガが言ったことは間違いじゃない。


 僕たち七海雄が何のために記憶を消されたのか、そして現在有している知識が正しいことかどうか、まったくわからないのだ。


 だけど、だからといって歩みを止めるわけにはいかない。

 たとえ人類の未来が潰えようとも、僕たちにはやらなくてはならないことがある。


 だから京子、もし僕の言ってることが間違っていたら、ごめん……

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