第2話 運命の出会い
話は1日前にさかのぼる
「磯貝さ~ん」
私は
「磯貝さんって、その、山口くんと付き合ってるんだっけ?」
「ええ、まあ、そうよ」
そう言いながら、私の心境は複雑だった。理由は二つ。
幸一とはある意味、自然消滅の危機に瀕していると自分でも感じていたから。
もっとも、原因は私にあるのだけれど。
もう一つの理由は、隠さんのこと。
本人には言っていないが、私は隠さんのことを高く評価していたから。
まず、かわいい。チェックの厳しい私が贔屓目に見ても、学校でNo.1じゃないかと思える、栗色の長い髪に、魅力の詰まったあどけない顔。そして、男子の心をわしづかみにするであろう、そのプロポーション。
だけど、私が彼女を最も高く評価するポイントは、自然にガーターストッキングを履きこなすことができる、そのメンタル。高校2年生でガーターとか、私と同じ価値観を持っている気がしたの。もっとも、私には絶対無理なんだけど。女王様臭がきつくなりすぎちゃうことは明らかだし……
といっても、私はこれまで彼女と言葉を交わしたことはなかった。2年生で同じクラスになって、2ヶ月たった今日、彼女から声をかけられたのが初めてだったのだ。
「実はね、あたしの彼の弟さんから、磯貝さんを紹介してくれないかな、って言われてて」
「えっ?」
私は驚いた。隠さんに彼氏がいる、という話はこれまで聞いたことがなかったからだ。
隠さんはこのクラスの女子の中でも人気が高い。むしろ浮いているのは私のほうだろう。私の性癖がみんなにばれている、ということはないとは思うけど、2年生になる前から幸一と付き合っていたし、クラスの女子のほとんどはそれを知っているから、かえって気を使われているのだと思う。でも女子の噂話なんて、それこそ至る所から聞こえてくる。だけど隠さんの浮いた話はこれまで、聞いたことはなかった。
「隠さん、彼氏いたの?」
「実はまだ、付き合い始めたばかりなんだけどね」
そう言ってはにかむ彼女。この笑顔は男にはたまらないだろうな。
「彼氏さんはこの学校の生徒?」
他人は知らないであろう情報を先取りできた優越感にちょっぴり浸りつつも、探りを入れてみる。
「違うけど、今ここにいるの」
「えっ? どういうこと?」
と思ったとき、隠さんの左肩に何かがくっついているのが見えた。
えっと…… イソギンチャク?
『初めまして、真乃実の彼の海野隆一と申します』
これは…… イケメンだ……
理由はない。イケメンなのだ。
正直に言って、隠さんに嫉妬してしまうほどの。
それくらい隆一さんが輝いて見えた。
見とれて唖然としている私に隠さんが言った。
「実は弟さんも連れてきているの」
『初めまして、隆一の弟の隆二です』
そう言って隠さんの右肩から現れたのが、これまたイケメンの隆二さんだった。野性的な隆一さんとは違い、見た目まじめそうなタイプだが、私はその隆二さんに一目ぼれしてしまった。
「あ、あの、初めまして、磯貝……京子……です」
いつになく緊張して挨拶してしまった……
『宜しくお願いします』
隆二さんは長髪を爽やかになびかせながらそう言って、私に頭を下げてくれた。
授業中、私は先生の講義が耳に入らなかった。
まだ心臓がドキドキしている。
運命的な出会いを感じていた。
とはいえ、私は自分で言うのもなんだが、意外に腰が重い。
自分自身の性癖が極端なことはもちろんわかっているし、そう言った意味で幸一とはこれまでうまくやってこれていると思っていた。
幸一は、私のお尻を舐めてくれた。
トイレで、用を足したばかりのお尻を。
私は、それだけで満足だった。今思い出しても気がおかしくなりそうだ。
もちろん、その後、どんどんエスカレートしていった私の行為はやはり常軌を逸していたのだと思う。正直後悔している。確かに幸一が求めていると勘違いして私はやりすぎたんだと思う。ビリビリ棒を直腸に突っ込んでほしいって言われ、実際に試した時は、見ているこっちが死ぬかと思うほど笑ったし。
というか、授業中に真面目な顔で先生の話を聞くふりをしながらこんなことを考えている私は、その段階で何かがおかしいのかもしれない。
ただ、私はただの性的異常者ではない。責めるのは好きだが、責められるのはもっと好きだ。そう言った意味でも、隆二さんに期待している私がいる。もちろん、あくまでそういった機会に恵まれるのであれば、の話だし、仮にそれが叶ったとしても、慎重にちょっとづつ歩み寄らなければならないことは間違いないが……
こういったことを客観的に考えているということは、おそらく、私の心はすでに幸一から離れているのだろう。実際、幸一も別の相手に気持ちが移っているように思えるし、その相手はおそらく――だろう。想像したくはないが……
よし、隆二さんともう一度お話してみよう。そして、それが良い方向に行くかどうかは別で、幸一とは別れよう。
そうしなければ、私はキャパオーバーで狂ってしまいそうだ。
だけど、決意してもなお、私は胸の高鳴りを抑えることはできなかった。
幸一のこと、あの日あの時のお尻を舐められる快感だけは絶対に忘れないでおこう、と誓い、その時のゾクゾクを体中にしみ込ませていたから。アハーーッ!
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