最終章 波夫side

第1話 伝承法

 桐子と香織によるおむつプレイで気を失った俺は、夢を見た。



 誰かが近づいてくる。

 女性だ。


 雰囲気が真乃実に似ているが、もっと大人っぽい。



「……マノミン……か?」


 俺の中の無意識が彼女に語りかけた。



「スタミナ様の記憶を受け継いでいるのですね」


 そのマノミンという女性が答えた。



 スタミナ……俺の先祖の名か?



「なぜ、伝承法を授けて七海雄と戦わせた?

 きみ達にとって邪魔者の七海雄を始末させようとしたのか!」


 俺の無意識がマノミンを問い詰めた。






 そこで目が覚めた。


 マノミンって……前世の真乃実のことか?


 伝承法? 戦っていた? 七海雄? ……うっ! 頭がっ!




 そして俺は再び意識を失った……







 ふりをした。







 なぜなら、まだ俺をもてあそぼうとする二人が目の前にいたからだ。




「zzz……」




 だが、残念ながら俺の寝たふりはバレていたようだ。


 桐子がニヤニヤしておれに近づいてきたからだ。



「はーい波夫ちゃーん! お薬でちゅよ~」


 やつはそう言って俺の鼻孔に浣腸を挿入した。


 ちゅぱ~


「ぶはっ! こらっ! 桐子、やめろっ!」


 俺はたまらず目を開けて液を吐き出した。


 おむつを脱がされた俺は、裸に靴下だけの姿で右手首と右足首、左手首と左足首を縛られた状態で仰向けにベッドに固定されていた。


 情けないことに姉と妹の前でそそり立っている。


「あら、お熱でちゅか~お注射打ちましょうね~」


 そう言って今度はメイド服姿の香織が浣腸を正しく使った。



 あひぃーーーーーーっ!!



「い、いや、待て、ちょっと待て! 大事なことを思い出したんだよ、俺」

「何?」


 桐子が俺にジト目を向ける。


「とにかく、この縄をほどいてくれ」

「その大事なことを言ったらほどいてあげるわよ」


「いやいや、先にほどいてくれたっていいじゃないか!」

「ほどいてしまったら、もし話が面白くなかったとき、お仕置きしにくいじゃな~い」


 いろいろと桐子の価値観が変わってしまっていて、ついて行けない。


「実はさ、俺、誰かの生まれ変わりらしい」

「へー、誰?」


 桐子がもう一つ浣腸を持ってきて俺の目の前で指に力を入れる。


 なんでお前らそんなに浣腸好きなんだよ!


 っていうか、この流れでこいつらを納得させる話をする自信がねぇ。


「続きしゃべってよ」

「ああ、それがだな……」


「何?」

「…………」


「お仕置き、されたい?」

「ちょ! 桐子、お前、そんなやつじゃなかったじゃないか!」


「あ、されたいのね」

「待て待て、違う、七海雄、じゃなくて、伝承法がだな」


「「えっ?」」

『『えっ?』』


「え?」


『七海雄……だと?』

『波夫さん、なぜそれを知っている?』


 ケイさんとカケルさんがテレパシーを挟んできた。

 というか助けてくれませんかね? あなたたち。


「七海雄を、倒さなければならない、らしい」


『なん……だと……?』

『誰が倒すのですか?』


「俺が……みたい」


 場の空気が凍りついた。俺、なんか変なこと言ったか?


「おにいちゃん」

「ん? 香織、助けてくれるのか?」


「ううん、助けない。だって、カケルさんもケイさんも『七海雄』だもん」

「は?」


 な、なんだってー! どういうことだよ!

 っていうか、あんなこと言ったらヤバいじゃねーか!!!


「あーごめん! 間違えた! 俺じゃなかった」

『じゃあ誰なんですか?』


 ケイさんにすごまれた。


「えっと……確か話の中では、スタミナって奴だったな」


『ス、スタミナだと!』

『お、思い出した! そういえば僕はやつに、一度倒されたことがある!』


「は? 何それ?」


 自分がわからない中、ケイさんとカケルさんは驚愕の表情を浮かべている。


『いや、なんでもありません、こちらの話です。続きをお願いします、波夫さん』


 カケルさんに熱い目で見られた。


「た、確か、伝承法ってので、そのスタミナの記憶が俺に継承されていたらしい」


『……ってことは』

『波夫さんがあのにっくきスタミナの継承者!』


 だーっ! ダメじゃん俺!


「待て待て! 俺が継承者ってことは、血がつながっている、桐子や香織も継承者なんじゃねーか?」


「あたしそんなの興味ないし~」

「わたしも~」


 鬼姉妹の手のひら返しがさく裂した。


「お前ら! 肉親への情はないのか!」

「あんたむしろ女性の敵でしょ? あたしとケイさんの仲を引き裂こうとする」


「違うーっ!」


 その時だった。部屋のドアが開き、磯貝京子が入ってきたのだ。


「話は聞かせてもらったわ! 人類は滅亡する!!」

「な! なんだってー!」


 彼女に対して調子よく答えたのは、俺だけだった。

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