第6話 これで安心して寝られるゾ!

 自宅に戻った俺は、これからのことを考えた。今日わかったことは、やつらが言っていることが正しいかどうかは別として、知的レベルは確実に高い、ということ。しかもコミュニケーション能力はさらに高い。相手の心を読むことができるんじゃないか、と思えるほどだ。


 その上やつらは総じて「女性に人気がある」し、「いくつかの能力を有している」とも思われる。基本的に友好的かつ紳士的だが、気に入らない相手がいると、そいつに変な夢を見させる、というのはその能力のうちの一つなのだろう。


 隆二さんの言っていた生殖うんぬんが本当の事かどうかはわからないが、仮にそれが事実だとすれば、人間の男たちは不要になるのだろうか? いやいや、あいつらが仕事とかできないし……って、あれ? ひょっとすると、職種を選ばなければできるんじゃね? あれだけのコミュ力があれば知的労働力として重宝されるかもしれん。肉体労働は女どもを使役して……って待て待て、もっと基本的なことから考えねば。食事は? 寿命は? 睡眠時間は?


 と、そこまで考えたところで


「おにいちゃーん、ご飯よ~」


 と香織に呼ばれ、俺はリビングに向かった。




「ん? 今日の料理、全体的にしょっぱくね?」


 桐子の作った晩飯を食べながら、俺は思ったことを口にした。


「えーそうかなぁ? いつもと何も変えてないけどなぁ……」


 その桐子の棒読みな言葉に俺は嘘を感じた。こいつは色々とあけすけなだけに嘘をつくのも下手くそだ。絶対塩分多めにしてある。


 ただ、桐子の肩にも香織の肩にもウミウシ(ケイさんとカケルさんだっけ?)がピタッとくっついているのだが、こいつら、動く気配がない。


「ところで桐子、ケイさんって普段、何食べてるの?」

「あー、そう言えばなんだろな?」


『愛情です。桐子さんの』


 ケイさんがテレパシーを挟む。


「え、そうなの? 仙人みたいだな」


『…………』


 あれ? なんか微妙な反応だ。特別侮辱したつもりとかないんだけど……

 話題を変えなくては。


「そ、そう言えばカケルさんは趣味とかありますか……ね?」

『Youtubeですね』


「え? ユーチューバーですか? ひょっとして踊ったりするんですか?」

『…………』


 あれ、また気まずい感じがする。心なしか『踊るわけないだろ? 舐めんな?』

って心の声が聞こえたような……


「そういえばお兄ちゃん、まのみんにも彼氏できたんだって?」

「え? マジ? あんた、まのみんを他の男に取られちゃったの?」


 う……そう来たか……


「ああ……相手は海野隆一さんっていう超イケメンだ」


『『え?』』


 あれ? 今ケイさんとカケルさん、反応した?


『ひょっとしてあれは隆一さんだったのか?』

『僕も昨晩は悪乗りしてしまった気はしていましたが……』


 ん?


「すみません、カケルさん、ケイさん、何のことですか?」


『『あ、いえいえ、なんでもありません』』



 あやしい……こうなったら言うしかないか。



「そういえば今日、隆一さんの弟さんの隆二さんと話してきたんだ。俺と同じクラスの磯貝さんの彼氏さん」


「ああ、京子ちゃん? あの子もかわいいよねー」

 桐子は京子のことを知っていた。


「そう。でな、『隆一さんが俺にいたずら仕掛けたみたい』って言ったら、僕の方から言っておきますので大丈夫ですよって言われた。何のことかはわかんないけどねー」


『『え? そうなんですか?』』


「うん、そうみたい。なんのことかはわかんないけどー」


『『……』』


 やっぱお前らも犯人か……

 そしてどうやらうちのウミウシ兄弟は隆一隆二兄弟よりもランクが低い様だ。



 そんなわけでその夜はぐっすり眠ることができた。アホ姉妹も襲いに来なかったし、変な夢も見なかった。当然夢精もしなかったぞー






 ……なぜか10年ぶりにおねしょしたが

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