第4話 クールビューティー磯貝さんとの会話

 教室に戻った俺は、磯貝さんに声をかけた。


「どうしたの? 磯野くん」


 黒髪長髪メガネのクールビューティーに怪訝けげんそうな顔をされたが、そこで引く俺ではない。


「ちょっと聞きたいんだけど、山口と別れたって、本当?」


「あ、うん……そうだけど……」

「ということは、今フリーなの?」


「え? いや、違うけど……」

「すでに相手がいるってことかな?」


「実は、かくれさんに紹介してもらって……」

「真乃実に? ああ、そうか、わかった。磯貝さんの彼氏さん、こんにちは。俺、磯野波夫と言います」


「えっ? なんで知って……」


 磯貝さんが驚きの表情を見せた。

 だが、俺が話しかけた相手は予想通り、紳士的な対応。


『初めまして磯野さん。海野隆二と申します』


「あ、やっぱ海野さんなんですね? ということは隆一さんのご兄弟ですか?」

『隆一をご存じなんですね。兄から何か聞かれてますか?』


「いえ、実は詳しいことは何も」

『そうですか』


「なので隆二さんと磯貝さんの都合が良ければ、いろいろと聞かせていただけませんか?」


「ええっ?」

 磯貝さんが戸惑う。


「ああ、ごめん磯貝さん、隆一さんについて知りたいんだ。というか本当は隆一さんに直接聞くべき話なんだろうけど、俺、彼とは今、気まずくてさ」


『ああ、そういうことですか。私はかまいませんが、京子、どうかな?』


「え? ええ、私もかまわないわ。放課後付き合うわよ」


「ありがとう。では後程」



 そこまで話した時、ちょうど次の授業開始のチャイムが鳴った。



 ***



 授業中、俺は考えていた。あのイソギンチャクに聞かなければならないことは、毎晩の夢についてだ。あれがイソギンチャクやウミウシの仕業なのであれば、どういった目的で行われるのか?


 原因を突き止め食い止めなければ、俺は毎晩のように夢精してしまう。山口のような一人っ子であれば、それはそれで毎晩ハッピーかもしれないが、睡眠時までプライバシーのない磯野家においては羞恥プレイ以外の何物でもない。

 自分で言うのもなんだが自尊心の強い俺のことだ。これ以上姉妹の前ではずかしめられたら死を選ぶかもしれない。


 ただ、それ以外にも疑問がある。あいつらそもそも男女関係として成立しているのか? というかそれ以前になぜ海洋生物が地上で生きられるのか? そしてその目的は?


 そんなことを考えながら、なぜか俺はエレクトぼっきしていた。

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