――おかしい。絶対におかしい。意味が分からない。


 どうして、俺がこんな点数を与えられなくてはいけないんだ。


「高森くん、あなたはもう少しの成績を良くしないといけませんね」


 渡された成績表を見て愕然とする。

 現国、数学、現社、化学、英語、全ての教科はオール100点。つまり、満点。

 それなのに……


「人格点が悪いんじゃ、今の時代やっていけませんよ」


 人格点これがあと一点低かったら赤点。落第だった。

 おかしい。絶対におかしい。意味が分からない。


「どうして、こんな点数なんですか。俺は何も悪くなかったはずです」


 完璧だったはずだ。試験中、何も事件を起こしていなければ問題発言もしていない。

 それなのに……


 食い下がる俺を、教師が冷ややかな目で見る。そして、眉間に皺を寄せて口を開いた。


「だってあなた、カンニングをした佐藤くんを告発したじゃないですか」


 そう。

 数学の試験中、俺は前の席にいる佐藤がカンニングをはたらこうとしていたのを目撃し、教師に突き出したのだ。


 それの何が悪いという。納得がいかない。正しさを主張しただけなのに、何がいけないというんだ。


「確かに、佐藤くんも悪いです。でも、告発するあなたの方にも問題があるのです。いいですか、高森くん」


 教師は無感情に言う。


を乱すことは良いことではないのです。時には、黙って見てみぬふりをしないといけない場面があるのです。そうでないと、これから社会ではやっていけませんよ」


 その言葉を聞いた俺は、黙り込んで成績表を握りしめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る