私と彼氏と無限寿司屋
腹筋崩壊参謀
※寿司のネタをどこから仕入れているのかは謎です
「「「「いらっしゃいませー!」」」」
威勢の良い店員さんの掛け声が一面に響く中、私と彼氏君がお邪魔したのは夕暮れ時の回転寿司屋さんだった。久しぶりに奮発して、一緒にお寿司を食べようと考えたのだ。
「よーし食うぜー」
「あまり食べ過ぎないようにね♪」
「だ、大丈夫だって……」
苦笑いする彼氏君が見せる可愛さに見惚れかけた私だけど、今回の主役はお寿司。遥か彼方からどんどん流れてくる美味しい宝石を、お財布を確認しつつもたっぷり味わう事が出来るからだ。そして、彼氏君がツナを、私が貝柱を取った所で、2人の贅沢が始まった。
「やっぱりここの寿司は美味いな」
「本当だよね」
「全くだぜ♪」
「そうだよね、彼氏君♪」
美味しいお寿司で癒される彼氏君たちの明るい声で店内が満たされる中、どんどん流れてくるお寿司を食べる私だけど、少しだけある事が気になり始めた。どうしても欲しいお寿司のネタが、いつまで経っても流れてこないのだ。それは彼氏君側も同じだったらしい。そして、店員さんに直接注文した瞬間――。
「「「「「「「大トロくださーい!」」」」」」
「「「「「「「ドラゴンロールお願いしまーす!」」」」」」」
――店を埋め尽くすお客さんによる全く同じ声が響き渡った。そして、あっという間に店の中は苦笑いで満たされてしまった。まさかこんなにぴったりだなんて誰も思わなかったからだ。そして、ずらりと並んだ店員さんもまた苦笑いしつつ、その声に免じて美味しいお寿司を作ってあげる、と意気揚々と頼まれた品を握り始めた。
「「「「「寿司を握ってる彼氏君も格好いいよねー」」」」」
「「「「彼女ちゃんだって負けてないぜ♪」」」」」
やがて夕暮れの回転寿司屋は、100億組の私と彼氏君のお客さんと20億人の店員さんの笑顔、そして回り続ける1兆個のお寿司に彩られ、幸せな時間が流れ始めた。
『私』と『彼氏君』しかいないこの世界は、今日も穏やかに過ぎていった……。
私と彼氏と無限寿司屋 腹筋崩壊参謀 @CheeseCurriedRice
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