第39話   「地獄」その4

「宇宙海賊マ・オ・ドクとデラベラリ先生とアマンジャさんの愉快な子孫たち」と「コンビニ強盗のおじさん」は、「くまさん」たちよりも先に、木星の巨大なお口に吸い込まれてしまいました。


 そうして到着した場所も、まったく違うところだったのです。


 海賊たちの船や宇宙バイクは、見たこともないような不思議な場所に出ていました。


 そこには、あまり大きいわけではない川が真ん中に流れていて、その両脇には広い広い草原が広がっていました。でも、その片方の草原の向こうには、巨大な森が広がっていたのです。

 どこまでも広がる草原と、深い森です。


 海賊たちは、みんなが着陸できそうな場所をさがしました。

 すると、やがて森に囲まれた、大きな「広場」が見つかったのです。


『よし、あそこに着陸する。』

 海賊の首領、「マ・オ・ゾク」が言いました。

 海賊たちは、いっせいに、地上に降りて行きました。


『ここは、どこなんでしょうか?』


 「マ・オ・ゾク」の第一の側近である部下が言いました。


『まあ、常識的に考えれば、木星の中であるぞ。』


 古(いにしえ)の大海賊「マ・オ・ドク」の子孫という「マ・オ・ゾク」が答えました。


『確かに。実際我々は、木星に開いた口から入りましたからな。しかも、ここは明るいのに、太陽が見えない。地上ではなさそうですな。』


 この側近は、「マ・オ・ドク」の偉大な科学顧問だった「デラベラリ先生」の子孫なんだそうです。


 名前は「サモン」と言いました。


『まあ、探検してみよう。探検隊を組織してくれ。』


『わかりました。』


 「サモン」さんは、「首領」と「自分」、それにドクター「ヤー」と、あと「コンビニ強盗さん」、それとそのほかの部下6人を選びました。


 「本隊」の指揮は、「副首領」である、息子の「マ・オ・ジン」に任せたのです。

 

『よし、行こう!』

 「マ・オ・ゾク」が言いました。

 10人は、森の中に向かって出発してゆきました。


       ☆   ☆   ☆


 一方、「くまさん」たちは、「ダイダラ王」が放った巨大な火の玉の爆発で、ばらばらに吹き飛ばされました。

 

 「くまさん」は、気が付くと地獄の「人事課長さん」と一緒にいました。


『気が付きましたか?』


 「人事課長さん」が、「くまさん」をのぞき込んでいます。


『ここは、どこ?』


 「くまさん」が言いました。


『さて、「ダイダラ王」の火の玉が爆発すると、巻き込まれた者は、地獄のあちこちに放り投げられてしまいます。ぼくにも、すぐにはわからない場所が沢山あるのです。少し休んでいてください。ぼくが周囲を調べますから。』


『そうはいかないよ。「しっくん」のお薬を早く届けないといけないんだ。それに他の子はどうなったんだろう?一緒に行こう。』

『そうですか。』


 「地獄の人事課長」さんは、「くまさん」のお耳を持って、引っ張り起こしました。



 「ぱっちゃくん」は、小さな池のほとりで気が付きました。

 そうして、ゆっくり手をついて、立ち上がりました。

 でも、周りには、誰もいません。

『うわーん。ここどこー。怖いよー。誰かいないのおー!』


 「ぱっちゃくん」は大きな声で呼びかけました。


 でも、なんの声も、音も聞こえません。


『うわーん! うわーん!』


 「ぱっちゃくん」は泣きました。


 いっしょうけんめい、泣いたのです。


 でも、いつものように、誰かがさすってくれたり、「よしよし」と言ってくれたりはしませんでした。

 

 あたりには、いつのまにか、真っ白な「キリ」が立ち込めてきました。







 

 







 



 

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