第37話  「地獄」その2

 みなさんは、「ラップ」という言葉の意味はご存知ですか? 

 もともと、「擬音語」といって、音を言葉で表していました。

 「ことこと」とか「こつこつ」とか。

 「幽霊さん」が、そういう音を出すという事で、「ラップ」現象なんて言われることがありますよね。

 「地獄ラップ」は、そう言う意味では、まさに「本場もの」なのです。


『ぼくらは 地獄の ラッパー 鳴っぱー すっぱー ショッパー』


『なんだいこれはあ?』

 アマンダが呆れて言いました。

 すると意外なことに、「ぱっちゃくん」が立ち上がって踊り始めました。

『「ぱっちゃくん」はね、お歌に合わせて踊るのが大好きなんだ。』

 「くまさん」が言いました。

『はあ・・・あたしは、「ラップ」より「バッハ」の方が好きだけどねえ。』

 またまた「アマンダ」が意外な事を言いました。

『え? 「アマンダさん」て「バッハ」を聞くの?』

 「こんちゃん」もびっくりして聞きました。

『ああ、聞くし、ピアノも弾くよ。小さいころから習ったから。「インベンション」とか・・・。』 

『ひえー、人は見かけによりませんねー。』

 「アニー」が言いました。


『地獄に落ちたよ ラッパー 鳴っぱー すっぱー ショッパー

 それでも ●君が好きだよ 地獄においでよ・・・』  

『すごい歌詞だねー。危ないなー。』

 「アマンダ」が言いました。


 壮絶な「地獄のラップ」を無理やり聞かされながら、「くまさん」たちは、地獄の課長さんが帰ってくるのを待っていました。

『早く帰ってこないかなあ。やっぱりここは地獄だねえ。』

 「アマンダ」が愚痴を言いましたが、「ぱっちゃくん」は、もう一生懸命、手を振り足を上げて踊っていました。

 楽しそうな「ぱっちゃくん」を眺めながら、「アマンダ」もなんだか少しうれしそうでした。


 やがて、ようやく地獄の「人事課長」さんが戻ってきました。

 ハンカチで汗を拭きながら・・・。

『じゃジャじゃーんー!』

 と演奏が終わりました。

 みんなは宇宙船の中から拍手しました。

 どうやらそれは、相手にもちゃんと聞こえているようです。

 三人の鬼たちは、手を振りながらステージを下りて行きました。


『いやいや、すみません、「幸子さん」が、お饅頭を食べ過ぎて、お酒も飲み過ぎで、なかなか起きてくれなくて。ええ、確認が取れました。ダイダラ王も、無理やり地獄に行かせたと白状しました。皆さんは解放です。』

『やったー!』

 みんなは大喜びしました。


 ところが、そこからが大変なことになったのです。


 突然、地獄の頭の上で、大きな炎が燃え上がったようでした。

『うわ、・・・なんだ・・・え、なんだって? えー!!』

 「地獄の人事課長」が飛び上がりました。

『大変です。ダイダラ王が、攻めてきたと。あいつは怒ると手が付けられません。地獄長でさえ、手を焼くくらいです。皆さん宇宙船から降りて、こちらに避難してください!』

『うわー。大変だ。どうしよう、「アニー」さん。』

 「くまさん」が「アニー」に聞きました。

『ここは、避難してください。「アニー」だけなら、何とかしますから。』

『早く早く!』

 「地獄の人事課長さん」が叫んでいます。

 皆は、くるくる回りすぎて、ひっくり返ってしまった「ぱっちゃくん」を引っ張りながら、宇宙船から逃げ出しました。


 その直後、大きな火の玉が、「アニー」を直撃したのです。

















 




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