第36話 「地獄」その1
「宇宙船アニー」は、どんどん底に落ちて行きました。
『わわわ! アニーさん、このエレベーターどこまでゆくの❓』
「くまさん」が尋ねました。
『底が抜けてしまったので、どこまで行くのか知りません。』
『飛びなさいよ。宇宙船でしょう❓』
「魔女アマンダ」がまた言いました。
『それが、エンジンかかりません。さっきよりも状況悪いです。』
宇宙船は、わけのわからない空間を、さらに地獄に向かって落ちて行ったのです。
🌸 🌸 🌸 🌸 🌸 🌸 🌸
どれくらい時間がかかったのか、よくわかりませんが、「宇宙船アニー」は、どかんと地面に激突するのではなくて、ゆっくりとどこかに着陸しました。
『やっと着いたみたいだね。』
「魔女アマンダ」が言いました。
『ここどこかなあ、前みたいにお花畑とかじゃあないなあ。』
「くまさん」が、外を見ながら言いました。
『真っ暗だね。』
「こんちゃん」が付け足しました。
『怖いよう。』
「ぱっちゃくん」が、まだ泣きべそかきながら言いました。
みんなは、窓から外をじっと見ました。
すると、まるで上からスポットライトが当たったように、一か所だけが丸く明るくなりました。
光の枠の外から、何ものかが現れました。
「鬼」です。
「赤鬼」です。
手にはマイクを持っています。
『あーあー、聞こえますか。ぼくは、地獄の人事課の課長であります。また、来訪者の接待担当でもあります。ようこそ地獄へ。歓迎いたします。木星の「ダイダラ王」からの報告によれば、極悪の「魔女」さんと、「ぬいぐるみさん」ご一行様ですね。これから地獄の入場手続きを行います。難しくはありません。体にハンコを押すだけです。それで、永遠に地獄の住人になれます。目下キャンペーン中で、まずは「お試し地獄体験コース・三日間コース」に参加していただきます。豪華なお食事つきです。そのあと各自の適正により、どの地獄に行くかを決めさせていただきます。なお、はんこを押すと、地上には永遠に戻れません、念のため。』
『あんなこと言ってるよ。アマンダさん。いいの❓』
「こんちゃん」が聞きました。
『ばかだね、いいわけがないよ。ほらアニーさん、こっちもしゃべるから。』
アマンダが言いました。
『どうぞ。マイクオンです。』
『あーあー、こちらは「魔女アマンダ」。いい加減にしなさいよ。勝手に木星に引き寄せといて、勝手に大火事にして、勝手に極悪人にして。冗談じゃない。あたしたちはね、「火星の女王様」に用があるんだ。それで、「不思議が池の幸子さん」に、この宇宙船を借りてんだ。文句あるなら、「幸子さん」に聞いてからにしてくれないかなあ。こんな事したら、あとで「女王様」に叱られても、知らないからね。』
『え?「幸子さん」からですか?それは聞いてないなあ。いやいや、話がややこしくなってきました。』
「赤鬼さん」は、もっと顔が赤くなりました。
『あの、「ダイダラ王」とかはね、「幸子さん」が嫌いなんだと言ってたよ。それで、あたしたちに八つ当たりしたみたいだけどね。』
『ああ、確かに、この前、「ダイダラ王」が「幸子さん」によけいなこと言ったらしくて、それで「幸子さん」のお饅頭をもらい損ねたと言って怒ってたなあ。自分が悪いんだろと言っておいたんだけれど。それはまずいなあ。仕事に個人的な私情をはさんではならないと、いつも言っているのに。』
「赤鬼さん」は光の輪の外側と何か相談していました。
『あの、念のため、「幸子さん」に確認します。少し時間をください。あ、その間、ここで「地獄コンサート」します。お楽しみください。』
「赤鬼さん」は、すっといなくなりました。
代わりに、マイクとエレキギターとドラムスを抱えた鬼たちが三人登場しました。
『いエーい。みんな元気かあ!?じゃあ行くぜ!「地獄ラップ」の三人組だあ。』
『また、ややこしいのが出てきたなあ。』
「アマンダ」がぼやきました。
『ジュアゃーん!』
と大きな音が響きだしました。
「地獄ラップ」が始まったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます