第32話  「木星の怪人」

 その後、木星までは特に何事もなく、宇宙船は飛んでゆきました。


 ところが、木星の近くに到達したとき、突然「宇宙船アニー」が動かなくなってしまいました。


『どうしたのさ。とまっちゃったよ。』


 「魔女アマンダ」が言いました。


『木星に捕まえられてしまいました。』


 アニーがそう回答しました。


『木星さんがどうして捕まえるの❓』


 「ぱっちゃくん」が不思議そうに尋ねましたが、みんな同じように思っていたので、全員が大きくうなずきました。


『これは、女王様とアニーしか知らない事なのですが、木星の大気はときどき、集合して意志を持つようになるのです。いつそうなるのかは、だれにも分かりません。木星自身もわかっていません。自然の流れの中で、偶然にそうなるのです。しかも、どういう性格を持つのかも、その時その時で変わります。とても穏やかで優しいときもあれば、凶暴で恐ろしい性格の事もあります。もし、いま、その凶暴なほうに捕まえられたのなら、宇宙船はたぶん、おしまいです。』


『どうなるの?』


 こんどは「くまさん」が尋ねました。


『食べられてしまいます。』


『えー!』


 みんなが叫びました。


 「宇宙船アニー」は、どんどん木星の方に引き寄せられてゆきます。


 そうして、「アマンダ」も、「ぬいぐるみさん」たちも見たのです。


 巨大な木星の表面を、厚くおおっている大気が、あちこちに集まってゆくのです。


 「大赤班」と呼ばれる、巨大な渦巻きの左側に、まったく同じような渦が巻きました。


 それは、あたかも二つの大きな「目」のようになってきたのです。


 そうして、やがてその下、南極の少し北側あたりには、その「大赤班」の二倍、いえ三倍くらいはある、超巨大な「お口が」開いてきたのです。


『顔になってきたよ。』


 「くまさん」が言いました。


『すっごい迫力だねえ。』


 『魔女アマンダ』が感心したように言いました。


『あのお顔、怖いよー!』


 「ぱっちゃくん」が、さっそく、びーびーと泣き始めました。


『ああ、ほら、よしよし、うるさいから泣くな。よしよし。』


 「アマンダ」が「ぱっちゃくん」をぎゅっと、抱きしめてやりました。


 実際、その「お顔」は、怒りに満ち満ちた、恐ろしい「顔」だったのです。


『ご機嫌が、大変良くないようです。』


 アニーが言わなくてもいい事を言いました。


 宇宙船は、さらにスピードを上げて、木星の大きな大きな「お口」の中に吸い込まれてゆくのでした。


 「アニー」だけではなくて、あの海賊さんたちの船も、同じように吸い込まれて行っているのが、窓からよく見えたのです。




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