第31話 『変わった海賊さん』
『ハッチを叩いていますが、どちらかというと、ノックに近いです。』
アニーが言いました。
『こんばんわ。海賊です。開けてください。開けないと壊しますよ。壊れると、やっかいですよ。ここは宇宙ですから。』
「海賊さん」の声が伝わってきたのです。
『おかしな海賊さんだねえ。』
アマンダが「ぱっちゃくん」を抱いて、なでてやりながら言いました。
『ほら、泣くんじゃないよ、うるさくてかなわないから。』
『よけい泣いちゃうよ。そんなこと言ったら。「ぱっちゃくん」はナイーブなんだから。』
「くまさん」が注意しました。
『はいはい。よしよし、怖くないよお。大丈夫、大丈夫。やれやれ。眠ったようだな。』
「ぱっちゃくん」は、泣きくたびれたのか、すーすー眠ってしまいました。
『開けます。宇宙海賊が、どかっと入ってきます。お覚悟を。』
「アニー」が言いました。
そうです。
「海賊さんたち」が、本当にどやどやと入ってきたのです。
みんな、いかにも「海賊」という感じで、とっても怖そうです。
「コンビニ強盗のおじさん」が、縄で縛られたまま、連れてこられていました。
『この方、弱いです。用心棒としては、もうちょっと訓練が必要です。』
後ろの方から入ってきた、一番強そうな「海賊さん」が言いました。
『乗員の人はこれだけ? へんな乗り組員だな。うん? 船長はだれ?』
『これで全部ですよ。』
「アマンダが」言いました。
『全部って、女の人一人と、あとは、「ぬいぐるみさん」ばかりじゃないか。』
『それで全部。あとはアニーだけだよ。』
「くまさん」が答えました。
『おわ!「ぬいぐるみ」がしゃべった。』
『ぬいぐるみがしゃべった!』
『しゃべった!』
「海賊さん」たちが、しりとりゲームのようにつながって言いました。
『あんたたち、変わった海賊だねえ。「ぬいぐるみさん」の言葉がわかるんだね。あんた何者だい。』
『おほん。ぼくは「宇宙海賊マ・オ・ドクとデラベラリ先生とアマンジャさんの愉快な子孫たち」の首領。「マ・オ・ゾク」といいます。』
『なんか、さっきより長くなってないかい?』
「アマンダ」がつっこみました。
『これが、正式名称。さっきのはちょっと省略したのさ。あんたは?』
『あたしは、「魔女アマンダ」さ。』
『魔女だ!』
『魔女だ!』
『魔女だ!』
「海賊さん」たちが、また、しりとりのように、つながって言いました。
『ほう、「魔女さん」ね。で、この「ぬいぐるみさんたち」は?』
「くまさん」が、一歩前に進みでて言いました。
『ぼくたちは、「しっくん」の病気を治すお薬を、「火星の女王様」にもらいに行くんだ!』
『女王様だ!』
『女王様だ!』
『女王様だ!』
海賊たちが、またまた、つながって、言いました。
『「女王様」だと。君たち女王様を知ってるのか?』
『知らないけど、この宇宙船は、女王様の知りあいの、「不思議が池の幸子さん」から借りてるんだ。』
『「サ・チ・コ・サ・ン」? 知らねえなあ。いいかい、女王様は、そう簡単には、知らないひとには会わないんだ。まあ、むりだね。』
『そんなことない。「情熱と愛は、人を動かす」って、しっくんが言ってたんだから。』
『情熱とあいねえ。まあ、そういう時期もあったがなあ・・・。そうだ、アニーってのは、誰だい?』
『こんばんは。ぼくがアニーです。この宇宙船自体です。』
『宇宙船がしゃべった!』
『宇宙船がしゃべった!』
『宇宙船がしゃべった!』
またまたまた、「海賊さんたち」が、つながって言いました。
『ふうん・・・「アニー」ねえ。・・・ああ、そうだ、もしかして、あんた「アーニー」じゃないのかい?』
『いえいえ、のばす棒が、一本少なくなって。アニーですよ。』
『なんで少なくなった?』
『それはまあ、いろいろ事情があります。』
『ふうん・・・。ぼくの大昔のご先祖さまは、「マ・オ・ドク」という宇宙の大海賊だったんだ。「デラベラリ先生」は、そのみぎうで、そうして最大のライバルが、「アマンジャさん」だったのさ。
ぼくには、祖先からずっと伝説が伝わってきている。いまから2億年以上前の事だが、女王様は、そのころも、もう活躍していた。そうして女王様には、「アーニー」というコンピューターの弟子がいたとね。』
『まあ、それは、ぼくのご先祖です。』
『やはりそうか。それは、すごいことになった。大変だ。みなのもの、この人たちを、いや「ぬいぐるみさん」も、「女王様」のところまで護衛するぞ。いいか!』
『おー!』
『おー!』
『おー!』
「海賊さんたち」が、続けて叫び声をあげました。
『なんか、やっかいなのが、また、ふえたような気がするねえ。』
「魔女アマンダ」が、「くまさん」にささやきました。
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